けれど、そんな私のおバカな思考を遮るように頭に彼からの視線を感じて、私は仕方なく顔を上げた。

顔を上げて柴崎くんを見上げると同時に彼と目が合ってしまった。


彼の私を射抜くように見つめている瞳が奥に熱を宿しているような気がして、顔を背けたくなってくる。

彼のその瞳は先週の金曜日の告白を思い出させるようで、恥ずかしてくて彼から目を逸らそうとした。


けれど、、

目を逸らすために顔を背けようとしたはずなのに私は未だに彼の瞳を見つめていて・・・。


目を逸らしたかったはずなのに突然、私の頬に触れた柴崎くんの右手によって、それは阻まれてしまっていた。


柴崎くんはまるで、逃がさないと言われているようでドキドキが止まらない。

これ以上、彼に心を掻き乱されたくないと思っているはずなのに気づけば彼の瞳に捕まっていた。


どれくらいの時間、柴崎くんに見つめられていたのだろう・・・。

それはほんの数秒にも思えるし、もっと長かった気もしてくる。


目を逸らすことも忘れて左頬に彼の手の体温を感じながら、見つめていた私のことを柴崎くんはずっと微笑みながら見つめてくれていた。


彼の右手はただ私の頬に添えられてる程度の力しかないだろう。

振り払おうと思えば振り払えるし、顔を背けようと思えばきっと背けられる。

でも、そうすることを忘れてしまったように私は柴崎くんのことを見つめ続けていた。



ううん、多分もっと理由は簡単な気がする。

きっと、私が本当は柴崎くんから目を離したくなかったんだ。

彼の熱を少しでも長い間、感じていたかった。


それが恋の始まりと呼べるような甘くて淡い想いなのかは確かではないけれど、でも柴崎くんを近くに感じていたい、というこの思いだけは誤魔化すことも目を背けることも出来そうになかった。