「……あーあ、もう花火、終わっちゃう」

音を聞く限りでは花火はクライマックスの様だった。
一際大きな光が部屋を一瞬包んで、その後の静寂に耳が刺されたように痛い。
最後の一発だったのだろうか。


「……終わっちゃった。折角浴衣着せてもらったのに、未央ちゃんに悪いことしちゃったな」


強がりのようにぽつりぽつりと言葉を紡いで静寂から逃げる。
外は打って変わって賑やか。誘拐犯さんが帰る気配はひとつもなかった。


時計は止まることなく秒針を進める。
何事もなく時間は過ぎ、あれからまた1時間が経った。
いつの間にか不安は許容量を超えて涙が零れてしまっていた。
止まらぬ涙が情けなくて情けなくて、自分が嫌いで涙が出る。