お湯を沸騰させる間に、冷蔵庫の中を覗き込む。
私が料理をするようになってからこの部屋の冷蔵庫の中も潤いを取り戻していたので、薬味や具になるものはたくさんあった。
合いそうなものを全部取り出して並べていれば、お湯が沸騰した様子。

沸騰したお湯にそうめんをばらばらと入れて、再び沸騰するのを待つ。
吹きこぼれないように火加減を調整して、1、2分。

茹で上がっためんを素早くザルに移し、水で熱を取った後、清水を流しながらもみ洗いをすれば完成。


「…君ってさ、料理の時だけは手際いいよね」

「そーお?」

「料理の時だけ、ね」

そんな会話をしている間にも作業を進める。
そうめんを冷やしている間に、冷蔵庫から取り出したものを調理。



トン、トンと子気味いい音を響かせながらネギを刻んでいれば、ふと背中に当たった体温に固まってしまった。


「……えっと。どうしたんです、かね、誘拐犯さん」

「…なんで敬語なの」


耳元で笑った気配がして、息がくすぐったい。
思わず敬語になってしまうのも当然だった。

今までこんな行為微塵もしてこなかったというのに、このタイミングで、後ろから抱きしめられているのだから。