ひだまりのようなその形に幸福論と名前をつけたなら


「…ここから、帰れるの?」

「帰れるよ。大丈夫。ありがとう」

「そっか」


開いた窓から誘拐犯さんが言った。私は答える。笑って答える。

それじゃあ、と私が背を向けると、車は未練ひとつ残さず、あの温かい部屋へと帰っていく。
本当は、誘拐犯さんにも未練はあるのかもしれない。いや、罪悪感と言った方が適当だろうか。

だからといって、私にあの部屋に戻る権利は、もうない。




ほらこうやって、幸せは終わっていくから。







幸せだった非日常的2週間は、こうして、終わった。