手術の時間が刻一刻と迫る。

ガラッ

球次(いよいよか…)

看護婦「そろそろ手術の時間なのでお部屋の移動をしますね。」

球次「お願いします。」

緊張しながらそう言うと、

看護婦「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。眠っている間に全部終わってしまうので。」

球次「そうですか…、」

看護婦「では移動の方おねがいします。」

球次「はい。」

ガラッ

球次(きっと大丈夫。)


医者「では手術を始めます。ーーー」


手術は10時間にも及ぶ大手術だった。

その後母は別室に呼ばれ悲しい現実を知らされる事になった。


俺は後遺症もなく、完全に治ったのだと思っていた。

母から話を聞くまでは…

ガラッ

球次「あ、母さん。俺治ったよ!またテニスできるよ!」

母は突然悲しい顔をした。

母「ごめんね球次。それは無理なの…」

球次「え?無理って…で、でも!」

俺はわけが分からなくなった。

母「先生がねーー」

それから俺は母から頭の腫瘍を全部取りきれなかったこと、もう一度手術を受けるか受けないかの選択をしなければならないこと、手術を受ければ今度こそテニスができなくなることなどそのすべてを聞いた。

球次「〜〜〜〜〜」

俺はベッドに泣き崩れた。

母は黙って俺の背中を撫でていた。

球次「母さん…先生を呼んできてくれる?」

母「分かった…すぐ来るから。」


ガラッ

母「連れてきたよ。」

医者「すまなかった。助けると言っておきながら。」

球次「先生は何も悪くないです。」

球次「先生と話したいから母さんは外で待ってて。」

母「うん…」

ガラッ

球次「先生…俺が手術を受けなければあと…どれくらい生きられるんですか?」

医者「言いにくいんですが……あと1年…もつかどうか。」

球次「1回目の手術を受ける前はどのくらいでしたか?」

医者「余命1ヶ月でした。」

球次「よかった。」

医者「え?」

球次「皆とテニスできる時間が11ヶ月も延びたんだから。」

医者「と言うことは、」

球次「はい。退院させて下さい。」

医者「本当にいいんですね?」

球次「はい。」

医者「分かりました。急いで手続きしましょう。」

球次「お願いします。」

医者「では」

ガラッ

母が医者と入れ違いに入ってきた。

球次「母さん…俺退院するよ。」

母「え!?…でも…」

驚いたものの母は俺の気持ちを悟ったのか、

母「そう…じゃあカレー作らないとね!」

と言ってくれた。

球次「余るほどね!」

こみ上げてくる涙をグッとこらえ、笑顔で応えた。

このあと奏に電話をした。退院報告だ。

球次(俺に残された時間が少ないことはさすがに言えなかったな…)

奏にはこれまでどおり笑っていてほしいかった。


それから2日後に俺は退院した。

と同時に俺の人生のカウントダウンが始まった。



To be continued...