俺と奏は朝病院へ行った。
奏は病院に着くと不安そうな顔をしていた。
球次「そんな顔するなって。俺が今すぐ死ぬわけじゃないんだから。」
奏「そう…だよね、私が球次を応援するんだから私が弱気になっちゃダメだよね!」
奏はいつもの顔に戻った。
そして、病院に入り受付を済ませると、すぐに診察室に呼ばれた。
先生「ここに来たっていうことは――」
球次「はい。手術をしてもらうために来ました。」
先生「そうですか、それはよかった。ではこれから色々と話すことがあるのですが…。そちらの彼女は聞かない方がいい話になるかと思います。」
奏「いいえ、私も一緒に聞きます。いや、聞かせてください!」
球次「奏…いいのか?」
奏「うん!」
先生「聞いてから後悔する話ばかりですよ?それでも聞きますか?」
奏「もちろんです。私は球次のことを応援するって決めたので。」
先生「そうですか…。では――」
先生が話し始めた事は、
手術がすぐに行われること、手術は一度しかできないこと、成功率がとても低いこと、失敗すれば余命を待たずに死んでしまうことなど…
想像していたよりも重く残酷とも言えるものだった。
とても怖かった。死が間近に迫っているような感覚に襲われた。
球次「それでも俺は手術を受けます。助かる可能性が少しでもあるなら。」
先生「分かりました。もう時間が残っていないので手術は明々後日に行います。よろしいですか?」
父『お金の事なんて気にしなくてもいい、生きていてくれさえすればそれでいいよ。』
目から涙があふれた。
球次(ありがとう…父さん。)
球次「お願いします。」
先生「では明日から入院してもらうので今日のうちに準備を整えておいて下さい。」
球次「分かりました。さようなら。」
先生「さようなら。」
俺と奏は病院を出た。すると奏が、
奏「元気出して!私までショボンってなっちゃうから。」
球次「うん…。」
奏「やっぱり怖い?」
球次「全然怖くないよ!…ごめん嘘、めっちゃ怖い。今にも押し潰されそうなくらいに。」
奏「私の家に来る?今日は親もいないし。気が済むまで泣けばいいよ。」
球次「ありがとう。でも今日は奏とどこか買い物にでも行きたいな。」
奏「いいよ。どこ行こっか。商店街に行く?」
球次「じゃあ商店街にしようか。」
奏「うん!」
俺と奏は商店街に行き、買い物デートを楽しんだ。
気づいたら午後2時を過ぎていた。
球次「そろそろ帰ろっか。入院の準備もあるし。」
奏「うん、そうだね。私も準備手伝うよ。」
球次「ありがとう。じゃあお言葉に甘えますか。」
そう言って俺達は家に向かった。
球次「ただいま〜。」
母「おかえりなさい。あらカナちゃん久しぶりね〜。」
奏「おじゃまします。」
母「汚いけどゆっくりしていってね!」
球次「余計なこと言わなくていいから。」
母「ごめんなさいね〜。」
球次「もう…。」
俺と奏は二階に上がり俺の部屋に入った。
球次「さてと、必要なものは、着替えと――」
俺が荷物を整理していると奏が、
奏「意外と綺麗だね。」
と言ってきた。
球次「そんなに意外か?」
奏「うん!」
球次「整理しないとすぐに物をなくしちゃうからね。」
奏「そっか〜。そういえばさっき買った本持った?病院暇そうだから何冊か持って行ったら?」
球次「そうだね。忘れるところだった。」
奏「整理してても忘れてるじゃん。」
俺たちは笑った。そして荷物の準備も終え、親にも事情を話し学校にも連絡を入れた。
奏「じゃあ明日から頑張ってね。毎日病院に行くから。」
球次「学校もあるんだから無理しなくてもいいのに。」
奏「無理なんかじゃなくて行きたいから行くの!毎日会ってないと寂しいでしょ?」
球次「それは奏だろ?」
奏「バレた?」
球次「奏の事なら何でも分かるよ。」
奏「なんで?」
球次「俺も同じ気持ちだから。」
奏「じゃあ私が今思ってること当ててみて。」
そう言われて俺は迷わずに奏の体を引き寄せキスをした。
奏は顔を赤らめて、
奏「なんで分かるのよ。」
と言ってきたから、
球次「言っただろ、同じ気持ちだって。」
と返した。
奏「バカ…」
球次「あなたはそのバカの彼女だよ。」
奏「私がそのバカさをフォローしてあげてるの!」
球次「そうですね。…今日はありがとな色々と。」
奏「うん!明日から毎日看病しに行くからね!」
球次「分かってるよ。よろしくね。」
奏「任せておきなさい。じゃあまた明日ね。」
球次「またね!」
この日俺は早めに布団に入り明日に備えた。
To be continued...