俺と奏は公園を出て家に向かった。辺りはすでに真っ暗で、街灯や民家から漏れる光が寂しく道を照らしていた。

奏「じゃあ、またね!」

玄関の前で奏は言って手を振っていた。

球次「バイバイ!」

俺も手を振り返した。

家に入ると母が夕飯を作ってくれていた。

母「随分遅かったわね。楽しかった?」

球次「うん。楽しかったよ!」

母「よかったわね〜。」

球次「うん…。」

球次(どうしよう。手術の事話そうかな…。でもこれ以上は迷惑かけたくないし。)

母「どうしたの?難しい顔して。そろそろご飯だから手を洗ってきて。」

球次「母さん。」

母「何?いきなり。」

球次「えっと……、大事な話があるんだけど…。」

母「――っ!分かった。でもまずはご飯食べましょ?」

球次「うん。」

母の顔は一瞬曇ったが、すぐいつも通りになった。

母はご飯を食べ終わり、

母「話はお父さんが帰ってきてからでもいい?」

球次「俺もその方がいいと思う。」

母「そう、なら先にお風呂済ませておきなさい。」

球次「分かった。」

9時半を過ぎた頃に父は帰ってきた。

父「ただいま〜。」

母「おかえりなさい。ちょっといいかしら?」

父「いいけど、どうかした?」

母「球次が大事な話があるって…。」

父「そうか…分かった。」

俺の病気の事は母から父に伝えてくれていた。

父「ただいま。」

球次「おかえり、父さん。」

球次「じゃあそろったから話してもいい?」

父「いいよ。」

母「うん。」

俺は奏に話したことを二人にも話した。

母は泣き崩れ、父も言葉に詰まった。

すると母が絞りだすような声で、

母「でもまだ助かる可能性はあるんでしょ?」

球次「あるけど…、お金がかかるし――」

父「お金なんか心配しなくてもいいんだよ。」

球次「でもこれまで親孝行した事ないのに、また父さんや母さんに迷惑かけるなんて嫌だよ…。」

父「球次は何か勘違いしてないか?」

球次「え?」

父「僕は球次の本当の父親ではないけど球次に父さんって呼んでもらえた時はすごく嬉しかった。親孝行って言うのは親のためになることをするってことだろ?」

球次「うん…」

父「僕と母さんは球次に生きて欲しいと思ってる。だから僕たちにとって一番の親孝行は球次が生きていてくれる事なんだよ。」

俺はいつの間にか父の言葉に涙を流していた。

母も父の横でその通りだと言わんばかりに頷いていた。

俺は手術を受けることを約束した。

その事を奏に話すと、

奏「よかった〜!ほんとによかった…。」

電話越しでも分かるくらい奏は泣いていた。

球次「今日はよく泣くね。」

奏「泣かせてるのは誰よ!」

球次「ごめんなさい…。」

球次「明日病気に行って先生に手術を受けることお願いしてくるよ。」

奏「ねぇ?」

球次「なに?」

奏「私もついて行っていい?」

球次「それは心強いな。お願いするよ。」

奏「やった〜。ありがとう。」

球次「俺はもう寝るよ。おやすみ。」

奏「おやすみ。あっ球次!」

球次「どうした?」

奏「好きだよ。じゃあね。」

球次「だからそれは――」

プー、プー、プー

球次「反則だって。」

この日はぐっすり眠ることが出来た。


To be continued...