奏『頑張れー!!!』

奏の応援が聞こえた次の瞬間、頭の中が真っ白になった。

球次「!?」

周りの音も人も見えなくなり、見えているのは楓太と相手とコートだけだった。

「スパーン!!」

気がつくと点が決まっていた。

球次(こんな経験初めてだ。でも悪い気はしないな。)

楓太「どうした?いきなり。」

球次「俺もよく分かんないけど勝てる可能性は出てきたってことだけは分かるよ。」

楓太「何だそれ、まぁ勝てるならいいけど。」

相手とのレベルは互角だった。体力の消耗が激しくてとても辛かった。

審判「ゲームカウント5-5」

現時点ですでに両ペアの体力は底をついていた。

ただ勝ちたいという気持ちが体を支えていた。

球次「楓太、これ以上体力勝負が続くと正直きつい。だから、」

楓太「分かった。」

球次「え?」

楓太「ミスしてもいいから決めにいけ!だろ?お前の考えくらいもう分かってるよ。」

球次「そっか、んじゃ行きますか。」

楓太「勝ちますかの間違いだろ?」

球次「だな。」

「スパーン!!!」

お互いが点を決めると

球次 楓太「ナイス!!その調子!!!」

互いにエールを送り、モチベーションを上げた。

その戦略が功を成し、ゲームカウント6-5でリードした。

球次「絶対取るぞ!!」

楓太「勿論だ!」

勢いに乗り30-0とあと一歩で勝てると思った時、

「ヒュッ!!ガッ!!!」

球次「グッ!!」

相手が手を滑らせ手から離れたラケットが俺の頭に直撃した。

楓太「球次!!大丈夫か!?」

球次「大丈夫。」

ポタッ、ポタッ、

楓太「全然大丈夫じゃねーよ!!血が、」

球次「こんなのすぐ治るって。そんな事よりこの試合は絶対勝たないと。」

楓太「まずは手当が先だ。試合に集中できないだろ?」

球次「ありがとう。」


頭に包帯を巻きコートに戻ると楓太が相手に向かって怒りをぶつけていた。

楓太「怪我させておいて謝罪の一言もなしかよ!!お前らに試合する資格なんてねーよ!!!」

球次「楓太もういいよ。」

楓太「でも、」

球次「テニスは紳士のスポーツだろ?あとこれは相手へのハンデだとでも思っておけばいいよ。」

楓太「お前がそう言うならいいけど。」

球次(どうせ俺ももう長くないしな。)


試合を再開するとさっきの『ハンデ』と言ったのが相手をイラつかせたのか再開早々デュースになってしまった。

そこから10分くらい点の取り合いが続きいた。その均衡を崩したのは楓太だった。

「スパーン!!ガッ!」

剣崎「うっ…」

楓太の怒りは治まっていなかったようで、楓太の打ったボールが相手の腹部に当たってしまった。

球次「楓太。」

楓太「分かってるよ。」

そう言うと楓太はボールが当たった剣崎に向かって頭を下げた。

楓太「すいません。」

球次「よし!楓太、ラスト一本最後の力振り絞って行くぞ!!!」

楓太「おうよ!!」


球次(この一球にこれまでのテニス人生すべてをかける!!)



To be continued...