土曜日俺はなぜか母に目隠しをされ車であるところに連れてこられた。

母「目隠しとっていいよ。」

球次「ここは…」

そこはテニスコートだった。

球次「なんでテニスコート?」

俺がそう聞くと後ろから男の人の声で、

男「それは球次くんとテニスがしてみたかったからだよ。」

俺が振り返ると母より少し若い男性が立っていた。

母「この人は新井克樹さん。新しい父さんになる人よ。」

克樹「よろしく球次くん。いきなりお父さんは無理でもいつかそう呼んでもらえたらいいな。それまでは克樹って呼んでね。」

球次「よろしくお願いします。克樹さん。それで俺とテニスがしたいっていうのは?」

克樹「僕は近くのクラブチームでコーチをやっていてね。お母さんから球次くんのことを聞いてどんな子なんだろうとワクワクしていたんだ。」

球次「そうですか。それで俺とテニスがしたいと。」

克樹「テニスにはその人の性格が出るからね。話してるよりも楽しいし。」

球次「早速やりますか?」

克樹「そうだね。手加減はなしだよ?」

球次「当たり前です。その方が楽しいですしね。」

母「二人とも怪我はしないでね。」


俺と克樹さんはシングルスで真剣勝負をした。

そして、俺はラストゲームで負けた。

克樹「ここまで粘られたのは初めてだよ。」

球次「克樹さんもとても強かったです。」

克樹「あと一年もすれば抜かれてしまうな。」

ズキッ

球次「そ、そうですか?嬉しいです。」

克樹「それにしても球次くんのプレイスタイルは独特だね。」

球次「え?」

克樹「もしかして無意識でやっていたのかい?」

球次「プレイスタイルは気にしたことなかったので。」

克樹「色んなモノが混ざってできたスタイルだね。言葉にするなら感の鋭さを活かしたカウンター型ベースライナーかな。」

球次「つまり反射神経を使っていち早くボールに追いつきカウンターで点を決める後衛みたいな感じですか?」

克樹「頭がいいね。特に情報処理判断力に優れてる。スポーツをするのにとても有利な力だよ。」

球次「これまで全く気にしたことなかったです。」

克樹「県大会出るんだろ?あと一週間イメージトレーニングもメニューに加えてみるといいよ。」

球次「はい。ありがとうございます!」

気づくと夕方になっていた。

克樹「そろそろ帰ろうか。」

球次「そうですね。母さんも退屈そうだし。」

俺と克樹さんは退屈そうにこっちを見ている母を見て笑った。

球次「母さんそろそろ帰ろう。」

母「もうそんな時間?あ、そうだ克樹さん今晩夕食ご一緒しませんか?」

克樹「いいんですか?」

母「もちろん!球次はどお?」

球次「大歓迎です!」

母「じゃあ帰りましょうか。」


この日の夜は俺にとって初めてのことが多かった。

球次(お父さんかあの人ならそう呼べるかな。さり気なく呼んでみよ。)

球次「もうこんな時間か父さん、母さんお休みなさい。」

母「お休み。」

克樹「また明日…え?今」

ガチャ

母と克樹さんが涙を流しているのを俺はドアの隙間から覗きながら俺ももらい泣きしていた。


球次(こんな些細なことで涙を流してくれるんだ。)

約1ヶ月後に起こるであろうことを想像すると涙が流れて止まらなかった。



To be continued...