「行くぞ!」




パックのコーヒー牛乳を 

ゴミ箱に投げ入れると



桜子が俺に言った。




俺に… 




だ。





聞き違いかと思った。







生まれてこのかた


女に命令口調で指示されたおぼえはない。






「おまえ 今 なんて言った?」


「なに!?」




大きな瞳

ととのった眉





振り向いた桜子に





少し



欲情した。




「社長さ〜…」




そう



俺は社長だ。



ちっぽけな中古車屋の(笑)


「なんか今イチ とろいよな(笑)(笑)」



誰だ!

こいつを連れて来たのは!?


「カッコいいけどな(笑)」





……




そう



悪いが俺はモテる。




妻の美咲は

俺を射止めるために


必死の奮闘をした。




なのに…



5年前



一人息子のリュウを産んだとたん



俺への愛は なくなった。






これ幸いと


女遊びを繰り返す俺。




妻は



もう



俺にとって






空気みたいなもんだった。