「ただいまー」



雅からの返事がないのが少し寂しい。

まだ帰ってないのかななんて思いつつ、漂うカレーのいい匂いに首をかしげた。


「雅ー?」


…コンビニにでも行ってんのかな。

今のうちにシャワー浴びておこう。

「はー、疲れたっ」

浴室に入ろうと手をかけた時、

…妙な音が聞こえた。


「なんだ雅、いるなら返事してよ」


_しかしそこにいたのは、雅ではなかった。




「…え、あの、ダレ、デスカ、」




上半身裸の男、の後ろ姿。

髪は短いしなんか背中引き締まってるし、

雅じゃないことだけは、たしか。


でも、


「憂、」


振り向いた男の顔は、雅のものだった。


「っあの、雅のお兄さん、?」


ちがう。雅は一人っ子だって言ってた。

じゃあ従兄弟?


「み、雅っ!どこにいるの!?」


とりあえず出てきて説明をしてもらいたい。

勝手に他人を連れ込むなって約束だったし、誰なんだこの男。


「ねえっ、」

「憂、黙って。そんなことしても無駄。雅が来るわけない。」

「どういう、」

「俺が雅だから」



……は?



「カツラ被ればわかる?俺が、永瀬 雅。女じゃなくて、男」



ほら、とどこから
取り出したのか、カツラを被った男。

それは、本当に、雅の姿だった。


「…嘘、でしょ」


「やっと気づいたのかよ」


あ、ありえない………!