「せんせー、さよならぁ」


「はい、さよーなら」



珍しく学校が早く終わりイヤホンを両耳につけて、いつもより少し早めの電車に乗った。


「ねーテスト死んだんだけどー…」

「マジそれな」


電車で学生を見るのなんて久しぶりだなぁ。


今日はだいぶ早く帰れた。

雅、驚くかな。

同居人のOL永瀬 雅の驚く顔を思い浮かべると、早く家に帰りたくなってきた。


「葛城センセー。今日早いね」


学ランに身を包む学生に話しかけられ私はイヤホンを外した。


「永瀬くん!部活帰り?」


「おー」


偶然にも私が担任しているクラスの生徒、永瀬 透くんに遭遇。

この子はサッカー部のキャプテンで、成績も優秀な完璧な子。


「……葛城センセーって、一人暮らしじゃないよね」

「…え?そうだけど、」


「やっぱり」


…この子は、考えてることが読めない。

だから充分、注意してこの子に接しているわけなんだけど。


「先生、もうちょっと危機感持った方がいいと思いますけど」


「そ、うよね。私ドジだしね。じゃあね、私ここで降りるから」

「さよーなら。センセー」



…なんか、変な気分になったな。

帰ったら雅に話を聞いてもらおう。


駅から徒歩10分の私たちが住んでるマンションは、結構高級だ。

帰るたびに少し嬉しくなる、いい眺めのマンション。