「じゃああれはかなり金額を使わなければ獲れないのか?」
「基本はそれだけど、弱点を突けば獲れることもある」

「弱点?」
「ぬいぐるみに隙間があったり、タグや紐がついてたりしたら、そこを引っ掛けることで獲れる時がある。でもあれにはそれがついてないから難しい」

「お前詳しいんだな」

「こういうのはコツがあるからね。知っているのと知らないのとでは獲り方が違ってくる。あれは手を出さない方がいい。お金の無駄だ」

 セイはまるで俺の考えている事が読めたような言いぐさだった。

「お前、こういうゲーム得意な方か?」
「得意ではないけど、獲れそうな奴はなんとなくわかる」

 ゲーム機がずらっと並んでいるところを、セイは一つ一つ見て回った。
 そして一つの台の前で止まった。

「これなんかいいかもしれない」

 それはパステル調の小さな丸いぬいぐるみが傾斜状に積まれていて、手前が落とし口になっていた。
 上手く崩せたら、そのまま落ちてきそうだった。
 セイは100円玉をポケットから取り出し、機械に投入する。

「お前やるのか?」

 すでに集中していたセイは、俺が声を掛けても何も答えない。
 まっすぐに前を向き、機械を操作するボタンに手を掛けていた。

 クレーンのアームが動き出し、それは横にずれていく。
 そして後ろに下がって、腕を広げながらマスコットをぐっと押さえ込んだ。
 その時点で崩れが起こり、一つ転がって落とし口に落ちていた。

「うぉ」
 俺が驚いている間に、アームはマスコットを掴みそれを持ち上げようとする。

 またその時点で二回目の崩れが起こり、もう一つ落ち、上手い具合にアームも一個掴んで、それを落とし口に落とした。

 なんと一度に三つも獲れてしまった。
 俺はびっくりして口を開けたまま、間抜けな顔をさらしていた。