「俺に勝ってたらお前は満足したのか? だったらもう一度勝負するか?」
「もういい。何度やっても俺はお前に負けるんだ。そういう風になってるんだ」
「ちょっと待てよ。何をそう悲観してる。俺はセイとこうやってバスケが久しぶりにやれて楽しかったと思ってるくらいだぞ。勝ち負けなんかどうだっていいよ」
セイは困惑して俺を見ていた。
どこかで何かに葛藤し、自分でもわからないままに見失って、俺の前で泣きそうになっている。
悔しい気持ちと勝ち負けにこだわらない俺との間で、羞恥心を感じているようにも思えた。
俺に勝ちたいと意地になったものの、持って行きようのない感情を抱えて処理に困っている様子だった。
ノゾミもまた不安げな瞳をセイに向けて見ていた。
近寄っていいものか、そっとすべきなのか逡巡してこの行く末を見守っている。
こういう場合はどうすればいいのか慎重になっているとき、俺の腹の虫が騒ぎ出した。
派手に鳴ったお蔭で、その場の空気が変わった。
俺は腹を抑えながら苦笑いになってしまう。
「参ったな。なあ、お前たちも腹空かないか? なんか食べに行こうぜ」
俺はノゾミからジャケットを受け取り、それに袖を通すと、同じようにセイも学ランを着ていた。
どこからともなく吹いて来た風を頬に受け、俺たちは一言もしゃべらず、歩き出す。
公園に植えられた木々の新緑のつややかな照りと、白い雲が流れる青い空は、この日を一層爽やかに見せていた。
少なくとも俺はいい汗掻いた気分になっていた。
自然と微笑んでいたのだろう。
振り返ればセイと目が合い、セイは戸惑ったように慌てて顔をそむけていた。
「もういい。何度やっても俺はお前に負けるんだ。そういう風になってるんだ」
「ちょっと待てよ。何をそう悲観してる。俺はセイとこうやってバスケが久しぶりにやれて楽しかったと思ってるくらいだぞ。勝ち負けなんかどうだっていいよ」
セイは困惑して俺を見ていた。
どこかで何かに葛藤し、自分でもわからないままに見失って、俺の前で泣きそうになっている。
悔しい気持ちと勝ち負けにこだわらない俺との間で、羞恥心を感じているようにも思えた。
俺に勝ちたいと意地になったものの、持って行きようのない感情を抱えて処理に困っている様子だった。
ノゾミもまた不安げな瞳をセイに向けて見ていた。
近寄っていいものか、そっとすべきなのか逡巡してこの行く末を見守っている。
こういう場合はどうすればいいのか慎重になっているとき、俺の腹の虫が騒ぎ出した。
派手に鳴ったお蔭で、その場の空気が変わった。
俺は腹を抑えながら苦笑いになってしまう。
「参ったな。なあ、お前たちも腹空かないか? なんか食べに行こうぜ」
俺はノゾミからジャケットを受け取り、それに袖を通すと、同じようにセイも学ランを着ていた。
どこからともなく吹いて来た風を頬に受け、俺たちは一言もしゃべらず、歩き出す。
公園に植えられた木々の新緑のつややかな照りと、白い雲が流れる青い空は、この日を一層爽やかに見せていた。
少なくとも俺はいい汗掻いた気分になっていた。
自然と微笑んでいたのだろう。
振り返ればセイと目が合い、セイは戸惑ったように慌てて顔をそむけていた。



