俺たちは無心になってボールを奪い合い、ひしめき合いながらどちらもシュートを決めようとする。
 ゴールの近くでは、背の高い俺のディフェンスに邪魔され、セイはシュートを決められないでいた。

 だが諦めず、食いついてはチャンスを窺い、ミドルレンジからシュートを試みる。
 それが決まると、今度は俺がすぐさまボールを奪いオフェンス側になり攻める。

 俺もまた負けてはいない。
 セイのディフェンスをかいくぐって、俺もシュートを決める。
 どちらも引けを取らずに常に同点に追いつき競り合う。

「残り10秒、9、8……」
 ノゾミがカウントダウンを始めた。

 この時点でどちらも5点を入れていた。

「7、6、5……」

 ボールを持っていた俺は、残り数秒に掛けて、ボールを放り上げれば、それはクライマックスに相応しくシュートが決まり、そしてそこでカウントダウンが終わった。

「……1、0。試合終了」
 ノゾミが告げた後、ゴールを潜ったボールは地面に落ちて数回バウンドし、転がった。

 俺が一点多く入れた事で結果的には勝ってしまったが、喜ばしいというより、楽しく遊べたという充実感の方が強かった。

 セイは俺よりも背が低く、年下であるにもかかわらず、俺と全く引けを取らずにプレイしていた。
 はっきり言って俺の方がやばかったかもしれない。

 セイは力み過ぎた事が原因で、ミスが多く、俺よりもシュートを決めようとした回数は多かったが、それが上手く決まらなかっただけだった。

「いい試合だったよ。シュートが確実に決まってたら、セイの方が勝っていた」
「慰めなんかいらない」

 セイは悔しさをにじませ、怒り口調になって吠えていた。

「おいおい、そんなに怒るなよ。たかが一点違いなだけじゃないか」
「それでも負けは負けなんだ」

 セイの体が震えている。