先輩、一億円で私と付き合って下さい!

「それじゃ、鼻血が止まったらもう一度、チャレンジするか?」
「いえ、そ、そんな。だけど、いくら承諾したからといって、天見先輩が無理する事ないです」

「無理したわけじゃないけど、付き合うってこういう事だと思ったから、自然にそうなったんだけど」
「でも、私には勿体な過ぎます」

「もしかして、嫌だったのか?」
「嫌だとか、そんな…… 寧ろ、嬉しかったです。あっ、その」

 ポロッと漏れた本音。
 俺を好きでいる事は間違いなく、俺の自尊心を再び高めてくれた。
 嫌がってはなさそうだが、慣れない事に戸惑っているのが伝わってくる。

「俺もちょっとかっこつけすぎたかも」
 素直にやり過ぎた敗北を認めたら、自分自身急に楽になった。

 鼻血を出したノゾミの前だから、自分も恥ずかしさを自然と表現できたような気がする。

 普段は虚栄心の塊のように、棘をいっぱいつけている生意気な俺が、それらを削ぎ落されるくらいノゾミにはやられっ放しだ。

「先輩、まだ鼻血が止まらなくて、あの、どうぞ先に帰って下さい」
「いいよ。ここで待ってるから、ゆっくりしろ」

 俺は階段を一段降りて、そこで腰掛けた。
 ノゾミは振り返り、俺の背中を見てるかもしれない。

 今はそっとしておいてやるべきだと、俺は静かにそこで階段をぼんやりと見つめながら、一息ついていた。