いや、助けなくてはならない。
 だから戻れたんだ。

 ついでにユメもセイも助けなくてはならない。
 みんなが幸せに生きる、新たな世界にしなければならない。

 そして俺は絶対に医者になってやる。
 ノゾミが抱えてる病気を治せるように。
 人の役に立って、沢山の人を幸せにできるように。

 迷ってる暇はなかった。
 後悔のないように突き進むだけだった。

 与えられたこの瞬間を俺は大切に過ごさなければならない。
 俺が今できる事、しなければならない事。
 前のままの俺じゃダメなんだ。

 必ず俺は変えてやる。俺にはそれができる! できるんだ!
 そして俺はノゾミとこの先を一緒に歩む。

 やがて、ノゾミが嫌がるユメを無理やり引っ張って連れてきた。
 俺は丁寧にお礼をいい、二人に家に上がってもらった。

 テーブルの席に座ってもらい、俺はケーキを自分の前に置いた。
 ノゾミが、一緒に持ってきたレスポワールのろうそくをケーキに立ててくれた。

 俺はマッチを食器棚の引き出しから取り出す。

「なんか無理やり誘われて訳がわかんないけど、めでたい席だし、私がやってあげる」
 ユメがマッチを奪って火をともす。

 二人が顔を見合わせ合図をすると、バースデーソングを歌い始めた。

 ノゾミは一生懸命に、ユメは面白半分に歌い、俺は少し照れながらそれを聴いていた。

 歌が終わり、ノゾミが恥ずかしそうに俺に言う。

「願いをしっかり思い浮かべて吹き消して下さい」

 俺は頷き、思いっきり吹き消した。
 火が消えると、二人は祝福の拍手をしてくれた。

「それで何を願ったの?」

 ユメが訊くと、ノゾミは諌めた。

「お姉ちゃん、願いは叶うまで言っちゃいけないんだよ」
「そっか、だったら、願いが叶った時、なんだったか教えてよ」

「はい」
 俺はにこやかに返事する。

 俺の願い。
 それはノゾミを助け、俺の大切な人たちが幸せになること。

 俺がこれから変えてやる。
 きっと俺にはできる──

 ノゾミが俺のために、ケーキを切ってお皿に入れてくれた。

 俺はノゾミの笑顔に見守られながらフォークを差し込み、大きな口を開けて、そのイチゴがたっぷりのったケーキを幸せ一杯に頬張った──
 

The End