先輩、一億円で私と付き合って下さい!


 告別式の日。
 俺はケーキのぬいぐるみを持って、それに参加させてもらった。

 誕生日プレゼントとして用意していたのに、こんな風に渡すとは思いもよらなかった。
 柩の中を覗けば、花に囲まれ眠っているノゾミがいた。

 俺はそのぬいぐるみを胸に置いた。
 この時、なぜキスをしなかったのか後からすごく後悔した。

 勇気を出して柩の中に顔を近づけるだけでよかったのに、俺は悲しみに支配され過ぎてそこまで頭が回らなかった。
 出棺していくノゾミの柩を見ながら、俺は自分の臆病さを呪った。

 
 それから数日がたち、消失感に苛まれ、俺は何のやる気も起こらなかった。

 今日は7月17日。
 月曜日だが、カレンダーでは海の日の休日となっている。

 本来なら、今日がノゾミとの約束の最終日になるはずだった。
 俺は家で寝転がって、溜息ばかりついていた。

 その時、ドアベルがピンポーンと鳴った。
 休日にここへ来る奴なんて誰もいない。
 かったるくドアを開ければ、郵便配達員が立っていた。

「書留です。印鑑、もしくはここに受け取りのサインを」

 俺はペンを取って、さらさらと名前を書いた。
 配達員は用が終わるとすぐに去っていった。

 ドアを閉め、手紙を確認する。
 『叶谷希望』の文字を見つけ、俺は震える手で、封筒を開けた。

 中には手紙と、もう一つ小さな紙切れが入っていた。
 それはロト6という数字を選ぶ宝くじの抽選券だった。

「えっ? 宝くじ?」
 俺は手紙を早速読んだ。