「一体何を言ってるんだ」

「すでに3ヶ月近くですし、私はこれで充分です。作りたかったケーキも渡せたし、しかも一緒に作れて、満足です」
「なんだよ、俺の事が嫌いになったのか?」

「そんな、以前よりも、もっともっと大好きです」
「だったら、別にそんな急ぐ事ないんだぞ。告白してきたのは4月17日だったから期限は厳密に言えば、7月17日までじゃなかったのか。」

 何を言ってるんだ俺は、期限なんて関係ないじゃないか。
 このまま付き合い続けようと言えばいいだけの話だ。
 それなのに、俺は突然の別れを切り出されて動揺していた。

「いいんです。そんなきっちりしなくても。先輩はもう自由になって下さい」
「おい、ずっとこのままじゃ、いけないのか」

 ノゾミは俺をじっと見つめていた。
「先輩…… そういって貰えて私は幸せです」
 そういうと俺に抱きついて来た。

 でも俺が抱き返そうとする前に、すぐさま離れ、そして踵を返して走って行く。
 赤に変わろうと点滅仕掛けていた信号を渡り、向こう側に着いてから、振り返り叫んだ。

「先輩、どうか幸せになって下さい。そして絶対にお医者さんになって下さいね」
「おい、待てよ」

 追いかけようとしても、すでに車が行き交いし、俺はその場にとりのこされてしまった。
 ノゾミはその後、振り返りもせずにさっさと走っていった。
 俺は訳が分からなくなり、ただ見えなくなるまでノゾミの姿をじっと見ていた。