「ノゾミ、何もこんな朝早く来なくても」
「だって……」

「慌てて来たんでしょ、またどこかでぶつかって、ほら、足に青痣できてるじゃない」
「あ、ほんとだ。ぶつけた覚えないんだけど」

「ちょっと当たっただけですぐできるんだから、気をつけなさい」
 その後、ノゾミが部屋に入ってきて、布団から身を起こしている俺を見て、泣きそうになっていた。

「先輩、ごめんなさい」
「だから、お前は悪くないって。そんなすぐに謝るな」

「だって、だって、セイ君が先輩の弟って知っていたのに、はっきりと説明しなかったから」
「俺が勝手に勘違いしてただけだ。今思い出せば、お前はちゃんと伝えようとしていたと思う。でも結果的に、勘違いしていた方が都合がいいって思ったんだろ」

「はい。その通りです。最初はちゃんと言うべきだって思ってました。言おうとしたら先輩変に勘違いして、訂正できなくなりました。そのままずるずるしてたら、セイ君は先輩に見る目があるって言われて、それで自分でもその目で先輩をしっかりと見てみようってそれでセイ君が勉強を教えて欲しいって言い出したんです。セイ君の気持ちも変化してきたから、このまま成り行きに任せたんですけど……」

「それで、俺が真実に気が付いて、色々な事情から複雑に絡み合ってこじれてしまったってことだな」
「ごめんなさい」

「謝るな。怒ってないよ」

 ノゾミは安心するも、ここまで必死でやって来たんだろう。
 すっかり疲れてやつれていた。

 昨晩も良く寝られなかったのかもしれない。
 これでは体を悪くしそうだ。

 今日はスカートを穿いているが、ユメが指摘していた、ふくらはぎの青痣がこの時目に入った。
 俺の事を心配して、余程慌ててきたに違いない。
 俺はそんなノゾミが愛おしいと思った。