「ノゾミ、天見君の事をとても気にしてたわ。あの子今頃かなり落ち込んでるかも」
「後で俺からもちゃんと説明します」

「最近元気がなかったのよあの子。何をするのも気怠そうでさ。この事、ずっと悩んでたんじゃないかな」
 遠まわしに、ノゾミを庇って、俺が怒らないように手を打っている。

 別に騙されていた訳ではない。
 俺が勝手に勘違いしていただけだ。
 ノゾミは自分の弟じゃないとはっきり伝えた。

 偶然にも、ユメの弟の話と被ってしまって、ここでもさらなる勘違いに繋がってしまっただけだ。
 でも俺は複雑だった。

「天見君疲れたんじゃない? 布団敷こうか」

 俺がぼんやりとしていたから、そう見えたのだろう。
 俺たちの間にあった小さなちゃぶ台を部屋の隅に立てて置き、押し入れから布団を取り出した。
 ベッドと並行して、ユメは手際よく敷く。

「夜中にお腹が空いたり、喉が渇いたら、勝手に冷蔵庫開けて、何でも口にしてくれていいから」

 俺は用を足し、歯を磨く代わりに、軽く口をゆすいだ。
 大きめのTシャツとスエットパンツを貸してもらい、見えない所で着替えた。
 それは男物だったけど、俺は何もいわなかった。

 俺が布団に入ると、ユメはお風呂に入りに行った。
 なんだか落ち着かず、ユメが風呂から出てきた時、寝たふりして誤魔化す。
 ユメもベッドの中に入る頃、電気を全て消したが、中々眠れそうにもなかった。