桜並木道は風が吹くと、桜の花が雨みたいに沢山降り注いでくる。


この景色が一番好き。



私は立ち止まって、大きく息を吸った。



「ふぅ〜〜気持ちい!!……って…痛っ!」



誰かにうしろから頭をカバンで叩かれた。


こんなことをするのは1人しかいないと思い後ろにいる人を睨みつけて振り向いた。


「やっぱり、秋か。」


「なんでそんなに素っ気ないのかな〜、さっきまで深呼吸までしちゃって幸せそうにしてたのによぉ」



秋はそう言い口を尖らせながら、あたしの横にきて肩に腕を回してきた。


あたしの肩に秋が腕を回したまま歩き始めた。


背が大きすぎて、肩に腕を回すというよりあたしの肩に腕を置いてるようにしか思えないけど。



「秋、部活じゃないのー?」


「あー今日仮入部だから、途中で抜けてきた」


「なるほどね〜」


「でさでさ、今日親いないから沙羅の家で夜ご飯食べるね〜」


「分かった!じゃあ、ご飯前に秋のこと呼びに行くね」


「りょーかい」


あたしたちの家は学校から歩いて15分くらいのところにある。


ばか話をしてると15分なんてあっという間で、お互いの家の前についた。


あたしたちは別々の家に入ってた。



「ただいま〜。お母さん、今日秋があたしん家でご飯食べるって〜」


あたしは夜ご飯の支度をしているお母さんの隣で、お弁当を洗い始めた。


「知ってるわよ。恭子さんから聞いたよ」


恭子さんって言うのは秋のお母さん。
秋のお母さんとお父さんは共働きで2人とも忙しい仕事をしていて、帰ってくる時間もいつもばらばら。


だから、秋はよくあたしん家で夜ご飯を食べる。


「もう少しでご飯できるから、少ししたら秋くんのこと呼んできてあげな〜」


お母さんはあたしの隣で鼻歌を歌いながら料理を作っている。