「泉さん…だよね?ちょっと良いかな…」
「はっ、はい…」
そう言って俺は廊下に泉さんを呼び出した。
「あっ、あの…本当に結衣とは知り合いで…っ」
何も言っていないのに、必死で結衣との繋がりを主張する。怪しい。
「俺…今何も言ってないけど…やっぱり泉さん、何か結衣との事で隠し事してるよね…?」
「わわわ私はなな何も隠してないですぅぅっっ」
この人は、嘘がつけないようだ。ここまで来たら、俺が今一番気になっている事を聞こう。
「君…真っ暗な闇の事知ってる?」
声を潜めて言うと、彼女の肩がビクッと震えた。やっぱりだ。『泉 沙耶音は、白咲 結衣と闇の中で会っていた』…今の泉さんの行動で分かった。俺が見た闇は、幻覚や妄想等ではなかったんだ。
「泉さんも、闇の中で結衣に会ったんだね?」
「…っは、はい…え?『も』って…その…あなたもあの闇に?」
「あ、名前言って無かったよね。神崎 昴だよ。よろしく。俺も、闇の中で結衣に会ったんだ。もし良かったら、あの場所のことで知ってる事があったら教えて貰えないかな…?」
俺は、闇の正体が知りたかった…というのもあったけど、俺の他に闇の中に行った人と、不安を共有したかったんだ。
「私は特に、何も…でも、まさか本当に闇と現実が繋がっているとは思わなかったので、結衣が意識不明って知って、正直辛かったし、夢であって欲しかったです…」
俺も、隣の病室にいたあの子との事もあるから、その辛さは良く分かる。
「俺の予想なんだけど…」
・何かの病気か何かで入院している人が闇に行けるのではないか。
・闇と現実は繋がっているのではないか。
・闇の中で会った相手が消えると、現実では亡くなってしまう。
これらの闇に関する予想を、俺の経験にもとづいて丁寧に説明していった。
「た、確かに、私も肺炎で入院してました…あっ、もう大分復活してるんですけどねっ」
「俺も、病名は知らないけど血を吐いて入院してるんだ。…まぁ、俺が闇の事で分かってるのはこの位かな。」
「か、神崎さんっ、ありがとうございました…!私以外に闇に行ってた人がいて、心強いです!また何か分かったら、いつでも連絡ください…」
と、スマホのメールアドレスを交換した。
「泉さんごめんね、長い時間呼び出して。結衣の所に行こう。」
「そ、そうですねっ!戻らないと結衣のお母さんに心配かけちゃいますし…」