あぁ、闇の中だ…俺は、闇の中に来るのが慣れてしまっていた。もう闇に来るのは嫌だ。あの時、あの子が俺に伝えようとした事…現実世界で看護婦さんに告げられた事…全てを思い出してしまうから…
…ん?人影が見えた。こんなに暗いのに人の姿がハッキリとわかる…これはまさか…!!
俺は、必死でその人の所へ走り寄った。まぁ、あの女の子ではない。誰だ…?
近寄って見てみると、その子も俺と同い年くらいの女の子だった。髪の毛は明るい茶色。上の方で2つに結んでいる。ツインテール…とか言ったっけ?この子も同じように、白いワンピースを着ていて、可愛い。声をかけてみることにした。
「あのー…」
その子はクルッと振り返った。
「はい…何ですか?」
「喋れるんですね!良かったぁ…」
「えっと…何の事ですか?」
その子は喋れるみたいだ。話ができて良かった。
「あ、俺は神崎昴。16歳。君は?」
「白咲 結衣。私も16歳なの。結衣って呼んで。」
やっぱり同い年だった。名前が分かったから、次は…
「あのさ、結衣っ……ちゃんは、さ…」
「ふふっ…結衣で良いって。」
「じゃあ、えっと…結衣はさぁ、どうしてここにいるの?」
結衣は、何も答えない。少しうつむいて、ずっと黙ったまま。
(あの子は、入院してたな…もしかしたら、結衣もどこかが悪くって入院してるんじゃ…?)
「ごめん…何か嫌な事言ったかも…」
「ううん。私こそ……あ、あの…私、もう行かなきゃ…」
「え?行くってどこに…」
「さよならっ!またね…!」
そう言って、結衣は闇の向こうに走って行ってしまった。
(そう言えば、あの子も闇の中に走り去っていたな……俺、あの子、あの子って、過去のことを根に持ちすぎだ。いい加減に立ち直らないとな…)
そう思いながらぼーっと立ち続けていた。