「有難うございます!」
「お父さん...ありがとね」
校門前で二人そろってキャリーバッグを片手に
お父さんの車を見送った。
お父さんの車が走っていった方向を
あたしより頭一個分高い所で見つめる旬
少しして曲がり角で見えなくなると
くるっと視線をこちらに向けた。
...どこまで律儀なの....
「んじゃ、行くか」
「えっいや、あたしはここで」
まるで一緒に集合場所のグラウンドへ行くぞと
言わんばかりのスマイルであたしを見るけど
一体、何を考えているの?
こんなのみんなに勘違いされるに決まっている。
「は?お前グラウンドじゃねーの?」
いやいや、旬くん
そんなびっくりした顔してるけど
本当、逆にどうしたの?
すると背後から「旬ー!」と声が聞こえて
あたしは思わず肩をびくっとさせながらも
2人同時に振り向くとそこには
「おう、カノン」
「おはよっ」
さらっさらのロングヘアに抜群のスタイルの美少女が
彼女もまたキャリーバッグを片手に
颯爽と走って近づいてきた。
「お前朝から元気だな」
「だって!楽しみだもん」
旬に笑顔を向けるその小さな顔は
あたしよりも上、旬と近い位置で
その会話を繰り広げていた
...2人を見ると周りの生徒から浮いて見える
まさにモデルのような2人。
すると彼女はようやくあたしの存在に気付いたのか
ニコッと歯並びのいい笑顔を向けてきた
「あっえっと、旬の...友達?」
「あっ...」
「そうだよ」
あたしの返事を無視して
当たり前のように即答すると
あたしのほうに1歩近づいて
頭に手を置く。
その瞬間__
彼女の顔が一瞬曇ったような気がした...
「そうなの!あたし、1組の黒川カノンです。宜しくね」
...1組...あ、同じクラスなんだ
「あっあたしは松田桃菜です...」
宜しくねと差し出された細くて白い手と握手すると
彼女は可愛く笑った。
....頭もよくて見た目もいい。
そして旬とすごく、お似合い
なんでかわからないけど...
胸が熱くなった。
それから成り行きで3人でグラウンドへ向かったけど
着いてすぐあたしはグループの3人を見つけて
2人に「また!」と挨拶をして
3人のもとへ駆け寄った
一瞬、気になって振り返ったけど
もうそこに2人の姿はなかった。

