窓側の1番前の席
あれは見間違うはずもない、旬だった。
特進クラスという看板のついた教室の中にいる人とは思えない
黒髪だけど無造作にセットされた髪の毛に
相変わらずラフに着崩された制服。
でも確かに旬はノートと教科書を照らし合わせ
何やら真剣にペンを走らせていた。
まるで自分だけの世界で時間が動いているかのような
決して声をかけてはいけないような雰囲気を放ちながら。
しかし、次の瞬間
旬は教室の前の扉から注がれる熱い視線に気づいたのか
ぱっと顔を上げたかと思えば 一瞬、その大きな瞳をさらに見開いてから
ペンをさっと机に置いて立ち上がる。
そしてそのままあたしのいるほうへと向かってきた。
逃げよう。そう咄嗟に思ったけれど
体は動かなくて視線も逸らせなかった。
『ガラ』
ガラスの扉越しに目が合ったまま、ドアは彼によって開かれる
「お前、どうしたの?」
扉に手をついたまま、少しけだるそうな様子は
さっきの熱心にノートをとる姿とは別人で
昨日の夜初めて家で対面した、あのときの旬だった
「あっ...うん、なんでもない」
「はぁ?んなわけないだろ、わざわざここまで来てるし」
「いやぁー、ちょっと暇だったから探検?してて」
「ふぅん」
あたしの咄嗟にとったごまかしも
きっと旬にはお見通し。
でも素直に言えなかった、旬を探していた。なんて

