「ねーなんでこんなに暑いの!」



教室のベランダで短いスカートをパタパタと揺らすエリカが長い足を組みなおしながら

「でももうすぐ修学旅行だね~」

と爽やかに笑う。


あたしはため息交じりに自分の足を見下ろして落ち込んだ。


_松田桃菜(マツダ モモナ) 高校2年生


特別可愛くもなければ、頭もよくない

全てが平均値と自負できる。



そして隣にいるのが布施エリカ、あたしの親友。

168センチとスタイル抜群で

顎ラインに切り揃えたワンレンボブが美人を際立たせていて

とってもよく似合っている。

運動神経よくて、勉強もそこそこ出来、

男女ともに人気も高い。

あたしにないものを沢山持っている才女。




「修学旅行のグループ分け、たのしみねっ」


エリカがぐっと距離を詰めてきて

視線を教室の中へ動かす


「...そんなの運だもん」


視線の先にいる彼こそ


あたしの片想いの相手、一ノ瀬類(イチノセ ルイ)くん。



「結構いい感じだと思うけどなぁ、桃菜と類」


1年の時、エリカと類くんが同じクラスで

エリカに会いに行ったとき、類君に一目ぼれした。

それからエリカ経由で教室行く度、何度か話すようになって

大人数では遊んだこともある。


そしてめでたく2年生に進級し、

同じクラスになれたんだけど...



「一ノ瀬呼ばれてるって」
「おい!類」
「一ノ瀬くん!!」



類くんは頭もよくて勉強もできる

しまいに学年では3番目くらいに入る程のイケメンで

明るくてみんなの人気者。



平均値のあたしと彼の距離は中々

思うようには縮まらず、気が付けば修学旅行を目前としていた。