あぁ。朝から気が重い…
昨日、菜月さんから佐々波翔がグレた理由を聞き出せとか言われて。まぁ、気になるっちゃ気になるけど…
キーンコーンカーンコーン
結局、来ないし!
一日中緊張して疲れた!
「あ、委員長ー!」
「あ、小坂(こさか)先生。どうしたんですか?」
この人は担任で生徒会の顧問でもある人だ。
「あー。佐々波が今日、休みで連絡もないし、電話しても繋がんないし、とりあえずプリントとか渡しに家行って来てくんねーかな?」
「そ、そんなぁ。先生行ってくださいよ。」
今日は生徒会もないからまっすぐ家に帰ろうと思ってたのに…
「頼むよ!ブラックリストの中でも色々わかりづらいやつだろ?いくついでにどんなやつだか調べてきてくれ。」
…生徒会出されると何にも言えなくなるんだよ…
はぁ。気が重いなぁ。
「ここだ…」
ピンポーン…
音がしない。誰もいないのかな。ホッ
「誰?」
視界が暗くなったと思ったら頭上から声が聞こえた。
「あ、あ、あの、同じクラスの田辺です。」
「あー。こけた人。」
いや、名前知ってたじゃん。
「何か用?もかちゃん?」
…///なに急に下の名前で呼んでんの!?
「こ、これ!先生が渡しとけって。」
「あー。サンキュ。」
「そ、それで!きょ、今日はなんで休んだんですか?」
「あんた、キョドりすぎでしょ。笑」
ドキッ
ん?なんだ?このドキって…
あー。そうか、この人こんな風に笑うんだ。
「うーん。別にこれといって理由はないけど、まぁ、強いて言えばだるかったんだよ。」
「でも、今日、体育祭の種目決めだったんですよ?」
「あー。なにに出るかなんてどうでもいいんだよ。」
「いやいや!よくないですよ!自分の出たくないものに出なきゃ行けないってすごくすごく嫌ですよ!?」
「いいって…俺は、思い出ができりゃいいから。」
そんな…
「つか、なんでそこまであんたが俺の心配すんだよ。」
あ、それは…
「それより!グレた理由を聞かせてください!」
「え?」
…どさくさに紛れて聞いちゃった!
「うーん。なんだろな。親の影響?」
ちゃんと答えてくれるし・・・
え?親御さんもこんななの…?
「あ、変な妄想すんなよ?俺の親はまともで離婚もしてないし、幸せにやってるよ。」
じゃ、じゃぁ、なんで?
「俺の親さ、会社の社長同士で家にいること少なくて弟と妹の世話を俺がしてんの。小学校の時は早く帰れたりしたからつきっきりでもできたんだけど、俺が中学入って反抗期とかになるとめんどくさくなって。ある日家出したんだよね。したら、たまたまボコられてるやつ見て喧嘩とかしたことなかったし、わからんかったけど、助けようとして突っ込んでったら勝てたんだよ。笑えるよな!」
「笑えるって・・・」
…これって私だけに話してくれてるんだよね。なんか嬉しい…のはなぜ?
「そんで、その助けた奴が玉木ってわけ。」
玉木?
「あのーほら、昨日、お前のこと知らなかった奴。」
あー。あの人か!
「そう。そいつに恩返しがしたいって言われてさ。それで、じゃぁ、交代で兄弟の面倒みるってなって。あいつ一人っ子だから最初は全然ダメだったんだけど、だんだん弟たちも懐いていって。」
「それで、なんでそれがグレる原因に?」
「だから、玉木の影響だって。前まではさ、人は見た目だと思ってて玉木のこと助けるときも不良じゃんとか思ってたんだけど、健気に謝ってくれるとことか結構いい奴なんだとか思えてきてさ。っていうのは表向きに俺がつくったんだけど。実はあいつに誤解されたんだよ。」
誤解?
「あぁ。俺が族長やってたんじゃないかってな。」
あー。なるほど。それで仕方なくグレた?
「まぁ、仕方なくって言い方はあれだけど、そんな感じ。」
そうだったんだ。
「つか、なんで、お前がそんなこと聞くんだよ。」
げ…痛いとこつかれた…
「あー。いや、見た目はこんなんなのに体育祭出るとかいうし、本当は見た目とは違うんじゃないのかなって興味持っただけなんですけど。」
…怒らせたかな?
「…あ、そ、弟たち待ってるから送ってやれねぇけど気をつけて帰れよ。長話しすぎて、もう暗れぇから。」
気づけばあたりはもうすっかり暗くて春だけど夜はまだまだ寒い。
「い、いや!こちらこそこんな家の前でごめんなさい!じゃぁ、また!」
「おう。また明日な。」
ん?明日?…明日ってことは学校来るってことか!…って、またなんで私喜んでるんだろう…
バタン
それにしても偉いなぁ兄弟の面倒とかみて。私は一人っ子だから気持ちわからないけど、大変なんだろうな。両親もいないっていってたし…関係ないけど、あの人ってボンボンだったんだ…
「おーい!!」
へ?
「やっぱ暗いし、送ってく。」
すごい肩が上下してる。走ってきたんだ・・・
「い、いや、いいよ。弟さんたち待ってるんじゃ。」
「いいーの。俺が送りたいから送るの。そんだけ。おけ?」
「う、うん。」
今まで彼氏がいたことはないけど、女の子に慣れてるんだろうなってことくらいわかる。だから本気じゃないんだってこともわかる。でも、それでも期待しちゃうよ。
「や、やっぱり!いい!ここで!」
「なんだよ。まだ断るつもりなら生徒会長って呼ぶぞ。」
「それは・・・ってなんで私がそのあだ名で呼ばれるの嫌だってわかったんですか?」
「いやぁ、そうかなぁって。俺もさ、族長でもないのにそうやって呼ばれてて、あとから仲間になった奴には名前も知られてなかった。」
なんかわかる気がする。私も廊下とかで、『あ、生徒会長だ。』って言われたときに知っててくれてるうれしさと同時に私の名前はもっと違うのにって言いたくなる気持ちがある。
「そりゃそうですけど。」
「はいはい。帰るんでしょ?この辺の奴らに見られたらめんどくさくなるよ?」

「じゃ、じゃぁ。お願いします。」
「おう。笑」