私は田辺もか(たなべもか)。生徒会長をしてる。自分で言うのもなんだけど、成績優秀。ただ一つ問題がある…友達が少ない。
生徒会のメンバーとはそこそこ仲が良いつもりだし、クラスでも浮いてるわけじゃない。なのに、グループワークとか校内行事の時に一緒にいる人がいない…
「会長、何ぶつぶつ言ってるんすか。これの集計お願いしますよ。」
この辛口な男の子は工藤直樹(くどうなおき)くん。2年生でしっかりしてて、笑顔が可愛い。滅多に見ないけど。
「ごめんごめん。」
「会長さんって、彼氏とかいたりしないんですかー?」
「い、いないよ!何言ってんの。急に。」
このデリカシーの無い質問をしてくるのは佐々木菜月(ささきなつき)。少しちゃらめの1年生。
「当たり前でしょ。友達もいないのに彼氏がいるわけないですよ。」
う…図星。
でも、毒舌すぎるぞ金村真司(かねむらしんじ)。
この人は生徒会副会長で唯一の同級生。3年なのに誰にでも敬語。
と、まぁ、こんな感じで生徒会は今日も働く。
「あのう、どうしますこの不良たち・・・校長にどうにかしろってたたみかけられてるみたいですけど。正直、僕としてはほおっておいてもいいと思いますけどね。」
生徒会のブラックリストと言われている不良や問題児ののった名簿を見ながら金村君がめんどくさそうに言う。
「金村君、あなたそれでも副会長なんですか?」
「そうですよ?」
ガクッ
開き直った…
5月。みんな学校に慣れてきた季節。グラウンドからは野球部や陸上部の人たちの声、校内からは吹奏楽が演奏してる音。それらを聞きながらする放課後のミーティングは学校全体をまとめてる実感を感じさせてくれる。
今日は疲れた。だって…
「今日、何するー??」
「ちょっと!!あなた達!!遅刻してきた上に、校則違反の服装ってどういうことですか!?」
「・・・はぁ?こいつ誰??」
なっ!この私を知らないなんて・・・この学校の生徒は全員と言っていいほど知っているのに。
「俺知ってるよ。」
ほら、知らないのはあんただけよ!
「全校生徒の前でこけてたもんねぇ?田辺もかちゃん。」
はぁ!?何それ!
「あれ?違った?ちゃんと入学式出てたけどな。俺。」
・・・佐々波翔(さざなみしょう)この不良たちのボスみたいなものでめったに学校には来ない。
「ち、違くないけど・・・」
「あ、あれ、翔さんじゃない!?かっこいいー!」
周りの女子たちが翔を見てきゃぁきゃぁと叫んでいる。
「・・・あら?俺の方が人気あんじゃね?」
「と、とにかく!そのピアスも、髪の毛の色も禁止です!」
「水臭い事言うなって。これは俺の象徴なわけ、ね?会長さん?」
っな!頭、ポンポンってしたー!?
思い出しただけでムカつく。勝手に頭触って・・・
「・・・長、会長!」
「は、はい!!」
やばい…数時間前のことだから鮮明に思い出す。
「顔、真っ赤ですよ?熱でもあるんですか?」
か、顔、赤い!?
「もう、しっかりしてくださいよ。今日はこの不良たちをどうするのか決めないといけないんですよ?もうすぐ体育祭なんですから。」
「ご、ごめん。えと、とりあえず、行事に参加してもらうには交渉が必要なので、私が直接いってきます。」
「え!?じゃぁ、なつきも行くー!!」
え?なんで?いつもはいってきてくださーいとか何とかいうのに。
「えー?だってー翔先輩いるんですよね?私、一回あってみたかったんですよー。かっこいいって有名だったから。」
「え?中学校とか一緒なの?」
「はい!あんまり知らないですけどー、前まではあんなんじゃなかったみたいですよー?ある時突然コロッと変ちゃったんだって男子たちが騒いでました。」
そうなんだ・・・ああいう人は最初からそんなんもんだと思ってた。
「なんで、変わったか気になりません?」
そりゃぁ、きになるけど…
「じゃぁ、聞いてくださよー!」
「え!?私!?」
「当たり前じゃないですか。今、気になるって言ったし。」
そ、そんな…
「あ、あのう…」
「あ?」
こ、怖い…ただでさえ大人数なのに、こんな暗いところで固まってるなんて…でも、佐々波翔がいない。
「あ、あのう、た、体育祭、で、出ませんか!?」

だ、だよね…ダメだよね…
「体育祭?なにすんの?」
あ、さっきの私のこと知らない人。
「俺ら、出たことねぇよなぁ?出ろとも言われねーし。」
いやいや、義務だし…
「あー、ごめん。こいつ馬鹿なんだ。リレーしたりすんだろ?」
「あー。なんだそーゆー系ね…俺はパス。」
その後もパスパスと誰も出てくれそうな人はいなかった。
「ダメでしたねー。それに、翔先輩もいなかったし。残念ですね。」
「うーん。いつも一緒にいないのかな。」
「失礼しましたー。」
あ、佐々波翔。
「翔先輩!」
「あ?誰?」
こ、怖い…
「翔先輩は体育祭出ますよね?」
菜月さんすごいな。こんなに怖いのに…
「あー。うん。でんじゃねーの?」
え?
「で、出るの?」
「あ、だめか?俺みたいなのが出たら。」
いやそうゆうことではなくて、意外というか…
「あー。まぁ、そう見られるよな。今年で最後だろ?俺にも思い出欲しいわけよ。」
あれ?でも、仲間の人たちは出ないって。
「あー。あいつらは意地はってんだわ。俺も2年までは全然出る気なかったし。誘われねーし?」
いやいや、だから、義務なんだって…
「やったー!翔先輩から言ってもらえるなら大丈夫ですねー!」
まぁ、よかったのかな。
「じゃぁ、これ、プログラムなんで、当日、ご家族の方がいらっしゃるならもう一枚差し上げるんですが、どうなさいます?」
「…あー。いいや。俺、いらないし、そん時はこれ渡すから。」
「いや、でも、時間の確認とか…」
「ゴミ、になったらかわいそうだろ?」
は、はぁ。まぁ、そういうことなら…?
では、私はこれで。
「委員長、デリカシーないですね。」
はい?そういうあなたは、職員室から出てきた瞬間に自己紹介もしないで声かけたじゃない!
「そーゆーことじゃないですよ。家族のこと。絶対何かありますって。委員長が家族って言った時の顔の曇りよう。見てなかったんですか?」
う、うん。見てなかった…
「まぁ、委員長にはわからないでしょうけどね!」
はぁ…?
「あ!それより!大切なこと聞くの忘れてました!」
え?
「なんでグレたか!」
あー。忘れてた。
「委員長。クラス一緒ですよね!?」
う、うん。まぁ。
「じゃぁ、聞いてください!!絶対!明日!」
「う、うん。わかったよ…」
なんで私がこんな目に…