「はい、どーぞ。」
「ありがと。いただきます。」
チサが切ってくれたケーキを受け取り、ひと口頬張る。
チサは子供の頃から『お母さん』に憧れていて、料理や裁縫、お菓子作りが趣味なだけあってやっぱり美味い。
料理を始めた頃、よく試食係で呼ばれてた。
ガキだったオレは、ガキなりにチサの喜ぶ顔が見たくて、失敗作だって「美味しいよ!」って全部食べてた。
「どう?美味しい?」
聞いてくるチサに「美味い」って言おうとしたけど……。
「初カレ記念ケーキだよ~。」
笑顔でそんな事言ってくるから…何か悔しくて。
初カレ記念とか、オレに持って来るなよ…。
思わず出た。
「あー。…普通。」

