「チサッ。……ごめんっ。」


部屋を出ようとしたチサを後ろから抱きしめた。


少しだけ抵抗するチサ。

チサを逃がさない様に、ギュッと抱きしめる力を強めた。


…チサからは甘い香りがする。


「そのまま…聞いて?」


チサは固まったままだ。



「…オレ…気付くのが遅かった。ナオに盗られて、初めて分かったんだ。どれだけチサの存在が大きいかって…。」



ナオと付き合って良いよって言った事、後悔してる。


大好きだよ、チサ。


「ごめん。オレ…幼なじみ盗られてヤキモチ妬いてた…。」


大好きだ。


…どうしても口に出せない。ううん。出したらいけないんだ。

チサを困らせたくない。

オレが…諦めればいい。初めからこんな気持ち無かった事にすればいいんだ。


「意地悪してごめん…。」


抱きしめていた腕を解いた。

チサは振り向かずにドアを開けて出て行った…。