翌日。
「もーえーぎー!!」
教室に入った瞬間、佐奈がすごい勢いで飛び込んできた。
「うわっ。」
あわてて、寸前のところで避ける。
そのあと、続けて突進してきた梨香子、海央もなんとか避ける。
「どーだった?」
「な、なにが。」
「は!?昨日のことに決まってんでしょ!お祭りよ!」
「告白よ!」
「キスよ!」
いや、3人で門出の言葉みたいに声合わせないで。
「ああ、そのことね。」
「そーよ!どーだったの?」
「…え、てかなんで昨日聞かなかったの?」
一緒に回ったじゃん、昴と回ったあと。
「…あれぇ?確かに。」
「忘れちゃったんだよたぶん。」
「ああ、そう、その程度の興味かい。」
わけのわからん奴らめ。
「まあ、細かいことはいんからさ、ね?」
怖いですぅ海央さま、その目だけ笑ってない感じ、非常に怖いですぅ…。
「…OKだったよ。」
あたしのぼそっとした声に、
「「「なにが?」」」
見事にハモる3人。
「だから、告白が、!」
うっわ恥ずかし!
…う、うへぇー…にたにたしてる…。
気持ち悪いですよお三方……。
「よかったじゃんっっ!!」
ああ、どもども。
「もうさ、めっちゃ緊張したんだからね、ほんと。ダメって言われたらどうしようかと思った。」
「え、なになに、俺もお前を愛してるとか言ったのぉ?」
佐奈、身を乗り出すな。もはや鼻息がかかるレベル。
「いや、そんなこと言わないっしょっ。……いやその、………俺も好きって……。」
ぼわっ。
沸騰なう。
「きゃーーーーっっ!」
「やばい最高に萌えるぅ!」
「かっこいーじゃん昴くん!」
お、乙女…ですな、はい。
もうねあたしはね疲れたの。
昨日で全てを出し切って。
だからねうん、そっとしておいて欲しい…。
だがしかし、こやつらの攻撃が終わるはずもなく…。
「「「で?」」」
気味悪いくらい声揃えんのやめてって何回言わせんの。
「だからなにが、で?なの!?」
もう言ったじゃん!告白成功したって。
すると、はぁーっと大げさなため息が。
「あんたねぇ、こっからがメインイベントでしょーが。」
呆れ返ってる海央を、怪訝そうに見つめる。
「なにがよ。」
どーん。
いやだからね今度は梨香子ですか。
近いっつの!近すぎて目のピント合わないっす。
「キスよ!!」
「声でかいわアホ!!」
ってつっこむあたしの声も相当でかかったみたいで、周りの子達があたしたちをまじまじと見つめてる。
…だー最悪。
ただ、そんなことで質問攻めを断念するような柔なハートは誰も持っておらず。
「ね、できたの?早く!」
「いや、あんたたち見てたんじゃないの?」
あんな近くにいたのに。
まさか見えなかったなんてことないっしょ。
そしたら、3人が急に同時に喋りした。
「いやね見たかったんだけど後ろで花火がすごすぎて」
「そりゃ見ようと思ってたけどめっちゃ花火がうるさかったからさ」
「絶対見てやるって思ってたけどついつい花火に気を取られてて」
…あんたたちさ、こういうときはバラバラに喋ってくんなきゃわかんないでしょ!?
まあつまりは、見てなかったってことでしょうね。
…いやなんで?
「おっかしくない?あんだけついて来といて最後だけ見てなかったの?」
「うん、そゆこと。」
申し訳なさのカケラもなく、さらっと佐奈が言う。
はぁぁ?ありえなすぎる、あんなに監視してる感出してきたくせに。
全く……。
「…うまくいったよ。」
もう。思い出させないでよ。
でも、もう頭がもうろうとしてて詳しいことはあんまり覚えてないかも。
「ほ、ほんとぉ!?!?」
「すごいじゃぁん!!」
わぁっと、一気に盛り上がる3人。
「あーあ、なら見ればよかったよ。」
「ほんとだよ、梨香子が絶対上手くいかないから花火見といた方が得だって言うから。」
「もー、それは言わない約束でしょ。」
「は?」
今聞き捨てならない言葉がっ。
「最初からうまくいかないと思ってて、それで花火見てたの?」
「そーそー、だって普通そう思うじゃん?経験がないもえがそう上手くいくわけないってね。」
ぬ、ぬわんだってぇこのぉ。
嘘つきやがってぇこのぉ。
「失礼な!あたしだってちゃんとできましたぁ。」
「はいはいおめでと。で、カップルになれたのついに?」
「うん…まあ。」
「わおーーっ!今日は宴じゃっ!」
「やっとかぁ…長かったわねぇ…。」
「え、うそでしょまじか!!」
昨日終わったのにまたお祭り騒ぎ海央と、涙ぐむ(演技の)梨香子と、今だになんか状況が飲み込めてない佐奈。
はいはい、3人でご勝手に盛り上がっててねぇー…。
すーっと、自分の世界に入ってる3人の間を縫って脱出し、自分の席につっぷした。
はぁ…そっか………。
カップルに…なれたんだよね…?
いいんだよね…?
あたし、昴の彼女だ。
うへーー、恥ずかしい。
でも、嬉しい。
だけど…
…悲しい。
目を開いても、自分の腕の間に顔をうずめてるから真っ暗だ。
…あと1ヶ月…もないんだ。
昴の彼女として、あとそれしかいられない。
あと、何が出来る?
あたしにできることは、やったと思う。
後悔は、ないと思う。
そうなんだけど……。
やっと幸せだって思えたのに。
昴が、かけがえのないものなんだって気づいたのに…。
遅すぎたんだな。
昴も言ってたけど。
なんで、もっと早く、気づけなかったんだろう。
今までの10何年間、あたしは何してきたんだろうな…。
楽しかったっていうことははっきり言えるんだけどね。
昴といると、なんだかんだ楽しかった。
昴は、どうしようもなくバカでアホで、すぐ泣いて怒ってうるさいあたしのこと、ずっと見捨てないでいてくれたもん。
家族、なんてもんじゃない。
本当に、あたしの一部なんだ。
たからさ……
気づいたら、腕がびしょびしょになってた。
こんなにも、涙が止まらないのは、あたしの中の昴を必死に、必死に流そうとしてるからなのかな…。
