ふわふわしてる。
地面が、雲みたいに。
体の感覚があんまりなくて、ただ昴と繋いでる右手だけがひたすらあったかい。
周りの華やかなお祭りの景色も、なにもかもモノクロ。
色あるのは、あたしたちだけだ。
…そんくらいの気持ち、今。
こんなこと他のカップルが言ってたあたしもドン引きだろうね。
頭いっちゃってるって。
だけどさ、
実際自分がこうなったらこんな風になるよ?
幸せだなぁって。
この世界の何もかもを味方につけた感じ。
でもね。
1つ気になるんだ。
昴が、険しい顔をしながら手の力を強めたこと。
…消えるんだ。
幸福に満たされた心のほんの隙間から、黒くて深い闇がじわじわとひろがっていく。
このまま、あたしは1人になるの?
もうちょっと、いや、ずっとまだ一緒にいたいよ。
だけど、昴の険しい顔見てたら、そんなわがまま言ってられないって思う。
昴が一番辛いんだ。
こんな幸せなお祭りの後消えなきゃなんて。
「昴。」
反応がない。
「昴?」
2回目で、ようやくこっちを向く。
「え、?」
昴…。
また、会えるじゃん、まだ。
だから、大丈夫だよ。
あたし、少しの間昴のこと忘れちゃうかもしれない。
だけど、
今日が人生で一番幸せだったってことは、絶対いつでも忘れないから。
「…また、明日ね。」
伝えたのは、それだけ。
でも、十分伝わったみたい。
昴は涙をこらえたようにぎゅっと笑うと、ゆっくりとあたしの手を離した。
「俺、萌黄の前で消えたくない…。」
「昴…、」
あたしも、目の前で消えるのは辛い…と思う。
目の前で消えたことがあるのかは覚えてないけど…。
「…うん、わかった。じゃあ、行って。」
とんっと、大きくて優しい背中を押す。
昴は2、3歩歩いてから、振り返った。
「じゃあな。」
明日な。
その言葉は、無理なでもそんな軽い調子を含ませてるように感じた。
「うん…!」
もう昴は、振り返らない。
昴が小さくなるまで、ずっと見つめてた。
…これからまた1年以上。
がんばって…、……昴。
