『それではいよいよ、打ち上げです!』
アナウンスを合図に、どんどん花火が連発していく。
カラフルなもの、音が面白いもの。下へ広がっていくすごいもの。ハートとかの形になっているもの。
真っ暗な夜にパッと目を引く大きくて明るい花が咲いたっていう情景を繰り返してるって感じ。
花火は毎年見てるけど飽きないなぁ。
ひゅーって静かに上がってくときはわくわくするし、ドンっていう音も夏を盛り上げてるって感じする。
昴も食い入るように見つめていて、終わると笑顔で拍手をしている。
花火はまだまだ、終わらない。
や、やばい、後ろの方から3人×2個で計6個の目玉の視線を感じる。
早くしなきゃ。
…でもどうやって。?
「…昴。」
いたって真剣に言ったから、それを読み取ったのか、昴も真剣な顔でこっちを見てくる。
「…きれいだよね。」
「…おう。」
「昴と2人で花火見るのは最初で最後だよね、きっと。」
絶対だってわかってるのに、きっととか言って逃げちゃう自分が嫌い。
「…だな。」
夜空に上がってる花火とは対照的に、あたしたちの心は重くなった。
でも、ちゃんと最後までやらなきゃ。
「…あたしさ、最近、昴とたくさん楽しめてすごい楽しい。」
「…俺も。」
目線をそらしながらだけど、昴は確かにそう言った。
「ほんと?うれし。
それでさ、あたし、昴とずっと一緒にいるわけだけど。」
そこで言葉を切ったのは、今までの思い出がたくさん頭をよぎって、なんかぐっと胸に来るものがあったから。
「昴がいるっていうことが当たり前になってたし、昴にとってあたしはなんなのか、あたしにとって昴はなんなのかっていうことを少しも考えずに今まで過ごしてきた。」
「うん。」
「だけど、今やっとわかった。」
自分でも逸らしていた目を昴に戻す。
昴もあたしを見る。
目が合った。
ふぅっと息を吸ったら、爽やかな夜の空気が胸いっぱいに入ってきた。
「あたし、」
出会ってから、今日までの思いを全部込めて。
「…昴が好き。」
