結局、たこ焼きができたのはそれから15分くらいたった後だった。
できたてあつあつ、ふわふわとろとろそうで美味しそう、、!
「うまそうだな。」
昴はそう言い終わらないうちにもう食べてた。
予想以上にあっつかったのか、少し顔を歪めながらもモグモグ噛みながらグッドサインを作った。
おおっ、じゃああたしも。
「いっただっきまーす。」
ぱくっ。
「ううううん、うまぁぁぁい!」
あー、トロトロの具が口の中に広がって絶妙に美味しい…!
「おいしぃぃ。」
昴はもう3個目に入っている。
早っ。
あたし猫舌だから時間たたないと食べれないのに。
「ふーん、幸せ。なんかお祭り感出てきたぁ。」
じまじみとそう言うと、そうか?と食べ終わった昴が言った。
「これからだろ。まだたこ焼き食ってるだけじゃねえか。」
ふっふっ、さすが昴君。
あたしもあわててたこ焼きを食べ終えて、両手をぶんぶん降る。
「そのとおーり、まだまだお祭りはこれからなのです!!」
、というわけで、ゆったりしてる暇はございませぬ。
風の速さでゴミ箱を探してゴミを捨て、次のわたあめ屋を目指す。
はー、だけど人が多すぎてどこになにがあるのかわからない。
いっつもお祭りの時は人についていってるから、道なんて覚えてないんだよね。
昴は完全にあたしに付いてきてるだけだし。
だから、匂いとかを頼りにさまようことしかできず。
まあ、わたあめは比較的に甘い匂いがするからわかりやすいっちゃわかりやすいんだけど…
途中で他の誘惑があたしを襲うの…!
かき氷とかアイスも食べたいけど…。
わたあめを2人で分けて食べるのが目標なんだから。
海央たちに教えてもらったこと。
…あ!
あった!
わたあめ屋!!
あんまり人は群がってないけど、まあそこそこ混んでる。
ちょうどいいかもな、さっきはちょっと混みすぎてた。
また、わたあめ屋の列に並ぶ。
「わたあめどんな味だろ。」
「普通に砂糖の味しかしないぞ。ベトベトするし、残ったらお前にあげるよ。」
「ええ、そーなの?そんな食べたくない?」
「いやまあ、最近食べてないしな。そこまで嫌いなわけでもないから。」
言葉ほど嫌そうでもないからまあいっか。
まあ砂糖が溶けたらベタベタするんだし、当たり前のことでしょ。
でもやっぱり見た目が雲みたいでかわいいから、楽しみ。
ついにあたし達の番。
店のおじさんは、注文を受けるとなにやらおっきな丸い機械に砂糖を入れ、スイッチを入れた。
ぶおおおおお
音がして機械が周りだし、おじさんがそこに木の棒を突っ込む。
その瞬間、棒の周りにふわふわの白いわたあめがくっついてきた。
「おおっ!!」
わおー、なにこれこんな風にできるんだ!
始めて見たっ!
感動するあたしをよそに、昴は至って冷静。
「お前本当に食べたことも見たこともないんだな。こんなん珍しくもないぞ。」
「え、そーなの?なんでよ、こんな不思議なのに。」
「初めて見りゃあそう思うかもしれないけど。」
ふーん、そいいうもんなのね。
受け取ったわたあめは大きくて丸くて、すっごいかわいい。
風吹いたら飛んでいきそう。
「結構でかいんだな。」
ほぉ、とちょっと驚いたように昴がつぶやく。
かなりでかいけど、食べれんのかな。
「じゃあ、割ろう。」
それとなく言って、ふわふわを掴んで真っ二つ割る。
わ、なんか綿みたいで上手く切れない!
…あ、だからわたあめなのか、あはは。
「はい。」
片っぽを昴に差し出すと、黙って受け取ってかじり出した。
では、あたしも、
「いただきまーす。」
あむっ。
しゅわぁっ。
うわ!?なにこれ?消えた!?
「ねえ、口の中で消えるんだけど!?」
興奮気味にまくし立てるけど、昴は全く慌ててない。
「そういうもんなんだよわたあめは。上手いか?」
「あ、そーなんだ、?面白い食べ物もあるもんだねぇ。…
うん、美味しい。なんか病みつきになりそう。」
ほんとに、口に入った物が一瞬で消えていくのは面白くて止まらなくなる。
だけど、…
「…俺もこんな風に消えんのかな。一瞬でなくなって、いなくなった後も何事も無かったかのような世界が広がる。」
突然そんなことを言い出して、顔が勝手に昴をぱっと向く。
「何言ってんの…。」
「あー、ちょっと文学的なこと言ってみた。」
ははは、と軽く笑う昴だけど、表情は笑ってない。
「よしてよ、今は…。」
「悪い悪い。気にしないで。」
んもう…。
あたし、さっきからずっと気にしてるのに。
昴が消えちゃわないか。
それなのに、不安を煽るようなこと言わないでよ、悲しくなっちゃうよ。
手元のわたあめが溶けてきそうだったからあわててかじったら、さっきよひもひどく甘ったるく感じた。
