心で叫ぶ、君のこと




引っ張って先頭を歩き始めたのはあたしだけど、すぐに自然な流れで隣に並んだ。




うーーなんか、隣を歩くのなんて慣れっこだけど、手を繋ぐのはやっぱ慣れない…。






いやいやいや、弱気な事言ってられない!





こっからが本番よもえっ。





って、海央とか言いそう。





待ってな、絶対あんたたちにいい報告してあげるし!





「昴、!」



「ん?」



あたしに合わせてゆっくり歩きながら、昴がこっちを向く。


「あのさ、わたあめ食べよーね。」


「わたあめ?そんなん超久しぶりに食べんな。お前食えんの?」


「食べれる…と思う。てかあんま食べたことない。」


「まじかよ。なんで食おうと思ったん。」


いやだって梨香子たちが言うから…なんて言えるわけもなく。


「え、まあ、なんか、デビューしたくなったみたいな?」




「デビューって…わたあめデビューとか聞いたことないわ。」




ぷっと吹き出す昴はなんか晴れ晴れとしてて楽しそう。




うーーん、あたしも嬉しい。





「はは、確かに。」




だいぶ暗くなってきて、お祭りに行くだろう浴衣姿の人たちが増えてきた。


カップルもいれば友達同士もいるし、親子もいるし。




みんなすっごく楽しみって顔して歩いてる。




いっやぁ、あたしが1番幸せだからね!




…いや、幸せになってやる。




もう、今日は世界中の誰よりも幸せになる!って決めた。




…でないと。



視界に昴が映るように目線をちょっと、斜め隣に移して、握っている手の力を少し強める。





ほんとに、消えちゃうのかな。



まだ、実感がわかない。




わく実感なんてないと思うけど。




だって、ずっと当たり前のようにそこにいた人が消える、って、本とかドラマの中でしか聞いたことないし、本当に起こるなんて信じろっていうほうが無理すぎる。






だけどさ、やっぱり…




昴が、変わったから。


信じなきゃ無理なんだってわかった。





なんだかバカっぽさがなくなってきて、大人びてきて、ふらーっとどこかに行ってしまいそうで…。




あたしを置いていってしまいそうで。





昴はもう、亜時に行く準備ができているんだと思う。




準備が…出来てるんだと…思う。





自然と、歩きが止まってた。



不思議そうに昴も止まって、さりげなくくいっと手を引っ張ってきた。




「あ、ごめん。!」



また歩き出すけど、明るい気持ちが急に沈むともうしばらく脱出できない。





「どうした?」



「う、ううん。なんにも。」



「急にテンション下がったじゃん、やめとく?」


なっ!



「ううんっ!全部!テンション上がってるって!」


ほらほら、とその場でジャンプして見せる。




少し納得いかないみたいだったけど、昴はふうん?とまた前を向いた。




「ならいいけど。嫌なら言えよ。」




「嫌じゃないってば…。」





あーあ……なんでこうなっちゃうんだろう。




もっと、キラキラした感じで楽しみたいのに。





余計なこと考えるからいけないんだ、きっと。






もう今は忘れよう、辛いこと。





そんなことできないけど。

簡単にはできないけど。



でも、今この瞬間を大切にしようって、


大切にしようって、





昴と約束したじゃん!




変わらなきゃ、あたしも。




「昴っ!」



「な、なに?」



突然叫んだあたしに、少し引き気味な姿勢の昴。



「早く行こっ!待ちきれないじゃん!」



「お、おう、?お前なんなの、、。」



へへへ。



もう覚醒したもんね。




エンジョイするんだからね、昴!





「どーもしてないよーだ!ほら早く早く!」




ぞうりは走るなんてレベルじゃないほど不安定だったけど、それでも構わず思いっきり走り出す。