心で叫ぶ、君のこと




履き慣れないぞうりを履いて、玄関を出る。


薄暗くなってきた空ではゆるやかに雲が動いてて、空気はひんやり冷たい。





昴はまだ出てこない。





…消えないのかな。



ふと、そんなことを思った。


あれ、


そういえば、お祭りの途中に消えたりしないのかな。



時間的には、消えても…おかしくない。





…そうだった……。



なんで今まで考えなかったんだろう。




最後まで一緒にいれることはないと思う…なのに。






花火、見れないじゃん。

いつまでいれるかもわかんないじゃん。



あー…。最悪だ。


また自分だけ先走って。


昴はどう思ったんだろう。


最後まではきっといれないって分かってるはずなのに、。


あたしがそのこと気づかずに行こうって言ったから、、。




だからちょっと迷ったのか。

でも、最後には微笑んで、いいよって言ってくれて…。




ダメだな、あたし。


昴にばっかり辛い思いさせて。



昴は優しすぎるよ…。




急に、真夜中になったように視界が暗くなったような気がした。


ずどーんと、気持ちが沈む音が聞こえてきそう。





楽しもうと思ったのに…。






そのとき。


「悪い、遅くなった。」



カシャン、と門が開く音がして、隣の家から昴が出てきた。

濃い青色の浴衣をさらっと着こなして、急いだのかちょっと肌が上気してる。
いつもよりなんかかっこいいなぁなんて思っちゃったなんてことは絶対言わないけど。



「あ、ううん、大丈夫。」



やばい…恥ずかしさと悲しさと申し訳なさとでうまく顔が見れない。


「?なに、なんかあった?」



うつむいているあたしを覗き込むようにして昴が聞く。


そうだ、昴にとって、あたしは、1年…いや、それ以上ぶりなんだ。



「あ、いや、その………


……消えちゃわない?」




あたしがこう聞くことをわかってたのか、昴がふっと顔を緩ませる。



「わかんない。だけど…大丈夫だと思う、。」



「え?…」



眉毛を下げて笑うから、昴は優しいような、悲しいような顔に見えた。



「今日は、消えないと思う…って思いたい。」



「昴…。」




大きな左手を取って、ぎゅっと握る。







「大丈夫だよ、あたし、この手離さないから。」



そう言うと、視線を落として手元を見つめた昴は、すぐにきゅっと握り返してきた。




それがスイッチみたいに、思わず笑顔が漏れた。




大丈夫だよね、平気だよね、

昴となら、最後までいれるよね。





「…じゃあ、」


さらにぐいっと口角を上げて、昴を見つめる。



「楽しもっ。」


そして、笑顔でうなずく昴をくいっと引っ張って歩き出す。






こ、これで合ってますかね、パイセン3人??