心で叫ぶ、君のこと








「もーーえーーぎーーー!」


「やばいよやばいよ!興奮してきたっ!」


「あーーついに明日なんて!」


海央、梨香子、佐奈、ワクワクしてます。

あからさまに、ワクワクしてます。

なぜか、ワクワクしてます。



いやまあ、夏祭りだからワクワクしてるってことはわかるんだけど、どうやらあたしと昴が行くことに興奮してるみたいで。



いやなんでやねん。



あたしは見世物じゃないって言ってるでしょーが。


「ちょっと!お願いだから邪魔しないでよね!」


これで何回目かわからないくらい言いまくったことをもう1回念押しするように言うと、3人は気持ち悪いくらいにまにました。


「わぁかってますって。イチャイチャカップルを邪魔するような趣味ないからさ。」


「あたしたちはあたしたちで楽しんでくるし。」


「まあ偶然会っちゃったらごめんねぇー。」


「ごめんねぇ〜〜。」


わざと遭遇したのを偶然と言い張ってあたしたちを観察するあんたらが簡単に想像できるんですけど。




ああ、もう、ほんと、


緊張する、!!



だって、、2人でお祭り行ったのなんて幼稚園の時以来だし(うちの親いたし)、それに、、、、キ、、、(自己規制)

ぎゃーーーーーー


脳内パニック!!



もう、いざとなると無理すぎる…。



だって、する前はまだいいとして、した後の空気感はたぶん想像を絶する気まずさだと思うわけ!


むり。むり。耐えられない!






……い、いや、逃げるな萌黄。


後悔だけはしないって決めたでしょ。


ファイト!どぅーゆあべすと!!





……ああああああやっぱりむりいいいいいい……



頭の中が回転寿司みたいなんですけど、、。



海央たちは、そんなあたしの複雑すぎる頭の中を見透かしてるように、こっちを面白そうに観察してくる。


「いいねぇ、どーやってキスしようか考えてるでしょ?」

「萌黄はぁ、ちょっと背伸びしてそのままストレートに!でいんじゃない!」

「ああ、まあ、そーね。大切なのは勢いよ!」


ストレートに、、?勢い、、?


え、あたしは今からなんかスポーツでもするんですかね?


もっと、なんかロマンティックにいかないもんですかねぇ、。




ー萌黄、愛してるよ。
昴、わたしも。ー

…からの〜みたいな。








ないな。うん。



無理だわ。




よし、勢いでいこう。うん。




「…勢い、ね。わかった。」


「お?」


「おお?萌黄選手がついにやる気になりましたぁー!」


「さぁてどんなファーストキスを見せつけてくれるのか!?」


楽しむなっての!


こっちは真剣も真剣、超真剣なんですから!!




「いやでもさ、やっぱその後が気まずくない?」




経験豊富そうな君たちならきっと解決法が…


「気まずいよ。」




は?





気まずいんかい。



「そーなの?」



佐奈がわははと笑って豪快に肩を叩いてきた。


「たりめーーよ!でもそんな空気も含めて楽しいわけぇ。めちゃカップル感あるじゃん?」



カップル感…あるんですかね。



「えええ、でもやっぱ本人達としては耐えられなくない?」



「もしそーだったらほら、抱きついちゃいなよ。」


「わあ梨香子ないっすぅ。いいね、顔見なくて済むしカップル感のかたまり!」


「それでさ、もえが昴くんの手を取ってめっちゃ笑顔で、ほら、もっと楽しも?って言って走り出すの。」


「やっばーーーっ。萌黄にできるぅ?」


「難易度高めーー。」


「でもできたらイチコロじゃね?」


「一発だね。」




カーーーット!




あのさぁいい加減さぁ、私を置き去りにして3人で盛り上がる癖やめてもらっていい?


だいたいね、話の方向ずれてるよね、



イチコロとかそういうの目指してないから!


一発だね、もなにもないから!




「だーーーもういい!あんたたちに相談したあたしがバカだったっ、。」


そう言ってドンッと机に突っ伏しても、3人のベラベラは止まらない。



「あーーあ、すねちゃってぇ、彼女さん?」


「ねーわたあめでも分け合ったら?2人でかじりつくみたいな!」


「あ、いいねー、りんご飴とかチョコバナナとかでもよくない?レベル上がりまくるけど。」


「いやいやさすがにちっちゃいっしょ。難しいよ。」


「まあねー、。あ、あと、浴衣の袖をくいって引っ張るのはテッパン!」


「それは萌える萌える!萌黄だけに。」

「なにそれ〜はははうける!」


「いやさぁあの萌黄がそんな可愛いことしたら、ほんと頭爆発するんじゃない昴くん?」


「するに決まってる〜。あーいいなラブラブでぇ。」


…とかなんとかかんとか話は続く、、。




あたし?

あたしはなおも机に突っ伏して頭上のわけわかんない会話をスルーし……





てるわけないでしょーが。



メモよメモっ。


ばっちり記憶しておくに決まってんじゃないの!



だって本当に何すればいいのかもわかんないんだから、海央たちの会話も参考にしてかなきゃやってられないって話。




もう、3人はパイセン。


みんな彼氏いたことあんだから(今は3人ともフリーみたい。ほんと自由に付き合ったり別れたりしてるよね、信じられん。)、尊敬しまくって色々教えてもらわなきゃいけないとは思ってる。




えーっと、なになにぃ。



浴衣を着こなす、メイクはばっちり。
(これはもう梨香子に強制的にやられる。)

声をいつもより高めにする。
(ソプラノ歌手みたいな感じ?いや出ませんって。あたし合唱でも男子パートがらちょうどいいくらいの声だからね?)

わたあめとかを分け合う。
(できればりんご飴、チョコバナナ。いや無理だわ。)

浴衣の袖をつかむモエシグサをする。
(申し訳ないんだけど、モエシグサっていう感じがわからない。え、あたしの名前の漢字?え、燃えじゃないの?)

小股で歩く。
(いや浴衣着て大股とか無理でしょ。自然に小股になる…はず。)

無邪気にお店に誘いまくる。
(これは大丈夫。言われなくても食べ物はたくさん食べたいし。)

がつがつ食べない。
(はい?だってお店に誘いまくるってことはたくさん食べるってことでしょ?ムジュンしてるよ?え?)

花火見たらはしゃぐ。
(花火見て冷静でいるとか不可能だから。叫んで飛び跳ねちゃう。)


からのキス。
(花火見てる時に昴の方見て背伸びして唇めがけてキス、花火見てる時に昴の方見て背伸びして唇めがけてキス、花火見てる時に昴の方見て背伸びして唇めがけてキス、花火見てる時に昴の…)



「みたいな感じ〜。」


「きゃー萌黄がんばってぇ。」

「まじこれ全部できたら完璧だからね?」


「最高すぎる思い出になるじゃん、やったね。」


あ、終わったみたいっす夏祭りモテ講座。



よっこらしょっと。

頭を整理させてからゆっくり頭を上げると、3人は少しギクッとしたように体を引いた。


「なに起きてたの。」


「寝てんのかと思って好き放題言ってたじゃぁん。」

「まあ参考になったっしょ?」


なによ聞いてないと思ってあんな喋ってたの?
意味わかんな。


まぁいいや。色々聞けたし、疑問は残るけど実践できるようにしよ。



「とてもためになりましたぁ、明日は頑張りまぁす。」



右手をあげてまでそう宣言すると、海央、梨香子、佐奈は満足そうに手を叩いた。


「その調子よ萌黄くん。健闘を祈るわ。」




…いやだからさ、あたしはスポーツでもするんですかっての。