…コクハクって、どうするんだろ。
…キスって、どういうときにするんだろ。
ずーっとさっきからこんなことばっかりが頭を回ってる。
あたし、思ってる以上にさっきの海央たちとの会話気にしてる、、。
前だったらたぶん、こんなに焦らなかったと思う。
視線は自然と、斜め前に向く。
今までのけだるそうな背中と違い、ここ最近は余裕そうに背筋を伸ばしてぴんも座ってる。
昴はいなくなっちゃう。
そう。
知ってる。
とっくに知ってるでしょうが。
このままでいいの?
このまま、どうでもいいことばっか話して、バカなことして、それでお別れでいいの?
答えに困って、意味もなく手元の教科書に目を落としたけど、正解が書いてあるわけもなく。
神さま。
萌黄はどうすればいいですか?
どうすれば、笑顔で昴とバイバイできますか?
昴との毎日に、後悔はなかったって、言えるようになれますか?
この教室から、昴は消えるの?
みんなの頭から、心から、昴の存在は消えちゃうの?
あたしの中からも。
昴はどこで生きていくの?
昴が座ってるイスも、机も、ロッカーも、何もかも全部ぜんぶ、昴のことを忘れちゃうの?
なんで。
だって、だって、あたしは今昴と生きてるのに。
昴がいる世界で生きてるのに。
昴はあたしの中の半分なのに。
いなくなったら、あたしは抜け殻になっちゃうのかな。
…だめだ。
昴のこと考えると、いても立ってもいられなくなっちゃう。
わーっって走り出したいような、
この場でうずくまっていたいような、
昴を全力でどこかへ隠したいような、
黙って見てることしかできないような、……。
とにかく、あたしはあたしにできることをしなきゃって思う。
なにができる?
あたしに?
昴を最後、笑顔にさせること、ならできるんじゃない?
あたしだって、最後に見る昴が暗い顔とかしてたら最悪だし。
昴が好き。
好きなんだ。
だから。
『告白するのよっ!』
……佐奈の言う通りだ。
想いを伝えないと。
伝えて、どうなるのかはわかんない。
でも、言わなかったら絶対後悔する。
後悔したら、昴を笑顔で送り出せない。
だから、ちゃんと言わなきゃいけない
…ってことでしょ。
お祭りで。
花火のとき。
好きです。って…。
…え、できるのあたし??
