玄関に飛び込んでバタンとドアを閉めて、肩で息をしながら立ち尽くす。
…何やってんだろ。
バカじゃないの、急にあんな変な態度とって。
でもほんとに、顔が近づいたり、背中を押されたりしたのに驚いて…。
いつものことなのに。
萌黄歩くのおせぇぞって、あたしの背中押すのなんて毎日のことなのに。
珍しくなんかないのに。
自分の気持ちがわかんない。
心がぐちゃぐちゃになってきて、気づいたらごしごしと両手で涙を拭ってた。
…昴、傷ついたかな。
それとも、なんなんだあいつめって、それくらいで済ませてくれるかな。
涙は止まらなかった。
苦しくて、なんだか、いてもたってもいられなくなって、だけど動けない自分がいて…。
あたし、昴のこと好きなのかな、。
ねえ、好きってこういうこと?
昴といると安心できて、何でも言えて…。
こういうことなの?
誰か教えてよ。
じゃああたし、今まではどんな気持ちだったんだっけ。
好きなのに、15年も気づかなかったの?
そんなの、ありえないよ…。
でも、あたし…。
昴がいなくなったらきっと、生きていけないよ…。無理だよ…。
あたしの中の昴は、どんどん大きくなっていってるんだよ。
だけど今さら好きでしたとか、昴にしてみればおかしい話だよね。
迷惑かな。
昴にとってのあたしってなんだろう。
聞きたい。
聞けない。
ぐちゃぐちゃだ。
すとんと崩れるように座った玄関のフローリングは、いつもより冷たい気がした。
