それからのこと。
あたしは、妙に昴のことを意識し始めてしまった。
なんとなく、いつもの調子にできない。
声かけられたら異常にびっくりしちゃうし、手でも当たったらびくって反応しちゃうし…。
なんなんだろ、これ。
何年来の知り合いだと思ってんの。
しっかりしろ、萌黄。
お祭りだって行くんだし、花火でキ…
「ぎゃあああああ!」
「萌黄!?」
あたしの絶叫に、少し前を歩いてた昴が驚いて振り向いた。
やばっ…。
「…あ、…なんでもない。」
「は?」
怪訝そうに眉をひそめるけど、キスとか想像してたらどうしようもなくなって叫びました、なんて死んでも言えない。
「ほんとに、なんでもないから。」
「なんでもなくてあんな叫ぶヤツいないだろ。」
「いや、ちょっとあの、む、虫がいたもんで。」
慌てて、そこら辺をパシパシ叩く。
「こら、虫!でてこぉい!」
「お前虫なんか怖がらないだろうが。」
呆れたようにそう言って、昴が近づいてくる。
ちょ、…!?
まってむりむり近づかないでむりむりむりむり!!!
どんどん近づく昴の顔。
いやいやダメだってほんと…!!
「いいから早く帰るぞ。」
今度は昴の手があたしの背中をぐいっと押して…
「ぎゃっ!?」
やばいやばい、びっくりして声が…。
「?」
思わず反射的に飛び退いたあたしに、昴は驚いたようにに手をひっこめた。
「えっ…と、あの、ごめん、急に触られたからびびって…。」
「え?」
「いや、ごめん、ちょっと先帰る!」
そう言ったか言ってないかのうちに、思いっきり家に向かって走り出してた。
振り向けない、昴を見れない、あたしの顔も見ないで欲しい。
わかんないけど、たぶん今、ありえないほど赤くなってる。
