ちっちゃい頃からずっと一緒にいて、





いちいち覚えてないくらい、っていうか覚える価値もないほどどうでもいいことで、



怒って、


笑って、


泣いて、


また怒って、


笑って、



泣いて、




いつどんなことを考えてるかなんて自分のことのようによく分かって、



もはや自分の中の半分を占める感じ?





これがあたしにとっての昴。




いわゆる幼なじみってやつですかね?



でもさ、幼なじみってもっとなんかキラキラしたもんじゃない?




映画とか漫画とかで結局はカレカノになるやつでしょ?



王道王道。ヒューヒュー。




いやいやあたしたち全然そんなんじゃないんで。




だってさぁ今さら昴にときめくとか無理すぎるでしょ。




家族にキュンキュンしないでしょ?つまりはそういうこと。





いやね、なんで突然授業中にも関わらず真面目くさってこんな事考えてるかと言いますと、







暇だから。



内容がさっぱり分からないから。





もちろんそれもそうだけど!








高校に入学しまして。


環境が変わるわけですよ。




するとですね、まあ今までの状況見てれば想像つくと思うけど、

周りの新しい友達が、登校初日にあたしと昴が一緒に登下校するの見て言ったの。





「え、まじ、萌黄ちゃんと昴くんってそういう…!?」



「ラブラブじゃねぇか!おいおい何ヶ月何ヶ月?」






はいはいちょと待てちょと待て。



萌黄ちゃんと昴くんはそんな関係ではございません。


ラブラブではございません。


よって、何ヶ月もなにもございません。





ったく、それ聞いて中学から同じ子たちも一緒になってからかうんだから困っちゃうよね。





あのねぇ、別に付き合ってるから一緒に登下校してるわけじゃないの。



なんつーの、もう日課?習慣?みたいな感じ。



朝起きて着替えて歯を磨いて〜みたいな1日の流れに組み込まれちゃってるの。




だってしつこいようですけど、幼馴染みなんだよ?


赤ちゃんの頃から知ってたんだよ?


朝一緒に歩くのなんて幼稚園の時からだし。





だから困ったなぁって思ってるわけよ。




それを数学の訳わかんない数式やらなんやらを聞き流しながら色々振り返ってたってことなのです。





そして、入学早々から真野萌黄&城田昴カップル説は光の速さで学校中に広まったのでございました。





ほぉら、今だってあたしをチラチラ見てる視線がひとーつ、ふたーつ、みっつほど。



そしてそれからその視線は、あたしとあたしの斜め前を行き来する。



斜め前に誰がいるかなんて言うまでもないでしょ。





「じゃあここの問題。城田、答えてみろ。」




あ、はいちょうど当てられました!




いや、てか先生、昴に当てちゃダメだって。



あたしからしては先生は今どの数式を指して昴に何をどう答えろって言ってんのかは未知の世界なんだけど、それは昴にとっても同じことで。





あたしたち揃ってアタマ弱いんだよねぇ。




あ、でも昴よりは頭いいけどね?


うん。



こうやって2人でいつも争ってると周りは言うんだよね、


ミニクイ争いだって。



一応言っておくけどミニクイくらい漢字で書けるからね?



書かないだけで。





…えっへんおっほん。



はいでは昴くん実況中継に戻りましょうー。





…っておいどうした?





まってまって何、昴なんで黒板に向かって悠々と歩みを進めてるの!?




いつもだったらそこは解く気もなく適当に理由つけて座るのに!



ほらほら周りもざわつき始めた!





「し、城田、お前解けんのか…?」




自分で当てといて先生まで目を見張るレベル。




昴選手、チョークを持ち、すらすらと滑らせ、いかにもそれっぽいことを書いたぁ!





「おおおおー!!」



一同、拍手。





いやいや大げさだろって思うかもしれないけど、ほんとに奇跡的なこと。




なにせ学年ビリから2番目だからね。





ビリはあたしってことは口が裂けても言えないけど。




「…あ、合ってる…。」




平然と席についた昴の前では、答え合わせを終え絶句している先生と、何やらひそひそ話し出すクラスメートたち。




「おい昴のやつ、どうした?」



「知らねえ。何かあったのか?」



「もしかしてカノジョに見せつけてやろうと…!」



「おおまじかっ!やっぱりもえg…」



おいおいおいそこの男子たち!


すぐあたしに繋げんな!



それからさも気を遣ったかのように小声にすんな!




あぁっ、たくもう…。




「な、なんだ城田。お前やるじゃないか。」




「いやぁ、たまたまっすよ。」





でもそれにしても昴大丈夫かなー。





本人はいつものてきとーな調子な気もするけど、

なぁーんか最近様子がおかしいと思うんだよね…。



ミョーに成長したっていうか、

大人になったっていうか。




いいことなんだけどね?


そうなんだけど、なんか違うなぁって。思うのよ。




幼馴染みの直感ってやつですか?




んーー…うまく言えないけど…。






…まって、なんかさっきから視界の隅にぶんぶん揺れてる手が入り込んでる気が…。




いや、海央何してんの、?

なんで目おっきくして手振ってんの?




ほらほら、先生に怒られるって落ち着きなよ…




おりょ?




いやみんな何こっち見てんの?




まだ昴とのくだらない話続いてたの?




だからいい加減にしろって言ってん…

「真野!なにボケーッとしてんだ早く解け。」



「え?はい?なに、あ、なんですか?」




笑わないでよみんな!


なんなの当てられてたの!?



早く言ってよ!って海央はそのこと伝えようとしてたのか。




「おいおまえなぁ…。少しは城田を見習え。」




は!?昴を見習う!?どこを見習うのよ。



なんてことは言えず。



「はぁい、すいませーん。」




だぁからこっち見て笑うなっての皆の衆!あたしは見世物じゃないの!



海央まで笑うな!



あっかんべーするな!





そしてそして!あたしの斜め前方右で背中を小刻みに震わせているのは…!





いやあんたね、笑いこらえてる風にするのやめてくれます?




かと思ったらこっち振り向いてニヤニヤしだしたし。




こんやろー、、!




「昴っ。頭良くなったんなら笑ってないでこの問題教えろ!」




あ、やべ。心の声でちゃった。



「おおおおー。」



「よっ、夫婦!」




いやなんの合いの手?


てかもはや結婚してるのあたしたち?





「真野!少しは解く努力くらい見せろ!」


「はいっはいっ。すいませーん!」




ひゃー最悪。ねえ誰か、まずはどこを解くのかだけでも教えてーー!