心で叫ぶ、君のこと






「やったじゃぁん、萌黄!」




佐奈がバシッと肩を叩いてきた。




「いやあ緊張したー。断られてたらほんとどうしようって感じだったもん。」




「断るわけないでしょ。だって想い合ってるんだから。」




「はいはい。」




海央のからかいも、今はほっとしすぎて余裕でスルーできる。




「うわっ、冷た。」





「ほらほら、それより計画立てなきゃ。せっかく萌黄がデートするんだから。」


「計画?」



「イエス!浴衣着てぇ、髪型めっちゃ可愛くしてぇ、メイク盛ってぇ、…。」



「うっわぁ梨夏子がやる気満々だ。もえ、覚悟しときなよ。」




「うげぇ…。」





梨夏子は人をスタイリングするのが好きみたいで、こういうイベントの時はいつも燃えまくってあたしたちの全身をコーディネートしてるの。




ただこだわりがすごくて長時間ずっと何度も試したりしてるから大変だんだよねぇ…。




「あのぉお手柔らかに…。」




「はいはい。あ、そだ花火見るでしょ?」



「花火?そりゃあね。」


「んじゃキスしな。」







…はい!?




「なななな!?」





りりりり梨夏子、さらっと何を、!!





「なに慌ててんのよぅ。あったりまえでしょ。」



「は!?海央まで!?」


「やっと萌黄が昴くんと真剣にお付き合い始めたんだからさ、それくらいしなきゃっしょ?」



「いやいやなに佐奈も!ってかお付き合いしてないし!」



「は?そなの、?まぁいいや、なんでもいいからしなって。」



なんなのその訳わかんない思考。





「花火打ち上げと同時に…ね!」

「やっば〜〜!」

「もえ頑張んな!」



頑張んな!じゃないし。
勝手に話進めて…!





…だけど……やっぱり…それくらいやるべき…?




もちろんちっちゃい頃から一緒の相手と今さらキスとか死にそうなくらい恥ずかしいけど、もう会えなくなるって考えたら…。




うううう、どうすればいいんだろう。


「あの、やっぱするべき、?」



「当然!応援してるってば!」



「…恥ずいんだけど。」



「ええ?萌黄が?だーいじょうぶ、ノリでいけるって。」




ノリぃ!?




だめだ全くついていけんこの人たち。






あたし意外と純粋なんだからね?





人並みに恥ずかしいし、人と付き合ったことだってないんだからね?





ついでに言えば、ファーストキスだってまだなんだからね!?





なんでそんなことになっちゃってんのかはわかんないけど。




「いーーから!なんならうちら隠れて見守ってあげようか?」




「なぬ!?結構っ!だ、大丈夫、うん、わかったから、!」



「まじー!!いえーい!」



「盛り上がるぅ!」




「お祭り終わったら即報告だからね?」




「はいはいはいはい。」





とか言ったけど、やっぱ無理。




だいたいなんで彼氏でもない相手とキスなんか…。




ていうか。



みんなに言われても軽い調子で返してたけど、あたし、昴のことどう思ってるんだろう。





付き合ってるように見えるくらい親しく見えるほどなのに、なんで付き合ってないんだろう。







昴のこと、好きなのかな、?






好きってなんだろう。






…難しすぎる。





海央たちに聞いたらまたバカみたいに盛り上がってめんどくさいから、絶対言わないけど。