「昴!!」
今日も早起きしたら、昴は予想通り前を歩いてた。
全力疾走で追いついてその肩を叩く。
「おう。」
昴は、肩を気にする風でもなくしれっとしてる。
あれ…?
だけど、ちょっと驚いたような、泣きそうなような顔してる。
いや!そんなことは今どーでもよい!
「ちょっとあんたねっ昨日なんで来なかったの!?」
その瞬間、昴があからさまに顔をしかめる。
「昨日…。」
なぬっっ?まさか覚えてない!?
「スイーツ博だよばーーーか!!」
仕方ないから言ってやったら、はっと息を呑む小さな音が。
「スイーツ博…そうだ…。」
「そうだ…じゃないわよ!!あたしずーっと待ってたんだからね!?電話も出ないしどうなってんのよ!?」
だけど昴は、あたしの剣幕におののく余裕もないくらい動揺してた。
目を泳がせて、何か言いたいんだけど言えなくて必死に言葉を探してる、て感じ…。
いや、そ、そんなにあわてる、?
そんなつもりじゃなかったんだけどな…
ってこっちが謝りたくなる。
「いやあの昴そんな…」
「萌黄。」
「は、はい?」
びくっとした。
あたしの体を突き抜けるような鋭い視線が、こっちに向いてる。
なんか、怖い…。
「え、えと、なに?」
あたしの声がよっぽど怯えてたのか、その瞬間昴がはっとしたように力を抜いた。
そして、決まりの悪そうな顔であたしを伺う。
「あ…なんでもない、」
「え?なんでもないってことないでしょ?」
あのせっぱつまった感じでなんでもないって、なんだそりゃ。
「いや、ほんとに。…昨日はちょっと急用ができて…連絡…取るの忘れてた…。」
「忘れてたぁ!?ちゃんと電車でもなんでもしてよ!そしたらあたし素直に帰ったのに。」
もう、ほんっとにありえない!
人を2時間も立たせといてぇ…。
だけど昴は、いつもみたいに言い返す気力すらないのか、申し訳なさそうな姿勢をくずさない。
「ほんと、ごめん。お詫びに…」
「おわびに?」
期待がこもりまくったあたしの目に、昴は少し考えてから、ちょっとだけにやっとした。
「…勉強教えてやるよ。」
はああああああああ!?
「な、何言ってんの!?全然お詫びじゃないしっ。もっと美味しいものとかさぁ…」
「次赤点とったら補習+三者面談+再テストなんだろ。」
ぎくぅっ。
「…そ、そうですけど…。」
「お前、回避できる自信あんのか?」
「…な、ないですけど…。」
「俺最近成績いいんだよなぁ。教えてやってもいいけど?」
ううう、卑怯者め!
夏休み毎日補習とか親と面談とかまたテストとか耐えられないし……。
でも塾は行きたくないし……。
もう、お願いしますって言うしかないじゃんっっ。
