さよなら、キミと夏空の残響





 真司はその日、放課後、奈々と勉強をする約束をしていた。(とは言っても真司がいつも教える側なのだが)しかし、約束の時間になる頃、奈々からメールで『いけなくなった』という旨の連絡がきた。
その時は特段不審に思わなかったものの、翌日の土曜になって奈々の母親から、奈々の行方を知らないか、と連絡を受けてからはさすがに心配になった。

 奈々の母親によると、『すぐ戻る』と書かれた紙切れが残されていたらしい。不安で不安でたまらないはずだが、彼女はそれを信じて、警察へと届けるのを躊躇っている。だが、届けを出すのは時間の内だろう。



真司は、奈々のはにかんだ時、怒った時、泣いた時の表情を思い出そうとした。しかし、靄が掛かったみたいに、奈々の表情を思い出すことはなかった。