「実はオレ、財満さんが教室に戻って来た時、あんな事故に遭ったのに、歩けなくなって車椅子なのに、こんなに明るくて、偉いなって、強いなって、すごいなって、思った。そんな財満さんのために、オレにもできることがあるんじゃないかなって、オレが財満さんを助けなきゃって。それであの日勇気出して話しかけてみたんだ。正直、好きになりかけてたと思う。でも、それは財満さんが車椅子で、普通の人と同じように頑張ってるからだって気づいて……。それじゃダメだってことを財満さんに教えてもらった。」
「そうだったんだ……。」
つまり、私があんなことを言わなければ、川上くんと付き合えていたかもしれないってことで。ちょっと悔しい気もするけど、恋にはタイミングが大事なのかもしれない。こんなことでダメになるようなら、きっとこの先、付き合えたとしてもどこかで崩れてしまう。だから、私と川上くんは初めから上手く行かなかったんだと思う。そのことは、きっと川上くんにもわかっているんだ。
「でも、この先で待ってる人は、きっと財満さんのことを一番に想ってる人だと思う。オレもよく知ってる人だよ。入部当初は、誰よりも下手で、バンドを組もうと誘ってたけど、誰も相手にしてなかった。それでも腐らずに必死に努力した苦労人だよ。本当にいいヤツだよ。だから、そんなあいつを幻滅させないためにも、財満さん、キミは行くべきだ。」
「うん。ありがとう、川上くん。」
川上くんは立ち上がって、ホコリを掃うことなくその場を後にした。その後ろ姿は、やっぱりカッコ良かった。いつまでも見ていたかった。でも、さようなら。私は、前に進まなければいけない。だから、もう、さようなら。川上くん。



