屋上へと続く最後の階段までやって来た。腕の力はもうほとんど限界に近かった。手のひらはさっきとは比べ物にならないくらい真っ黒になっていて、ところどころ血が滲んでいた。
川上くんはまだ車椅子を担いで、私に付いて来てくれている。
「財満さん、屋上に何があるの?」
「大事な人に大事なものを返さなきゃいけなくて……。」
「そっか……。じゃあ、オレの仕事はここまでか。」
川上くんは担いでいた車椅子を踊り場に置いた。そこで、私は言えなかった想いを伝えることにした。
「川上くん。私、酷いこと言っちゃった。でも、言ったのには理由があって……実は、ずっと前から川上くんのことが大好きだったの。大好きだったのに、事故に遭って、歩けなくなって、それでもう恋愛は無理だなって……。だから、川上くんがあの日、話しかけてくれて本当に嬉しかった。ギターを始めたのも川上くんの大好きなテイラーみたいになりたいって安っぽい考えからだったんだ。そんな川上くんの優しさを裏返して受け取っちゃって、普通の人ならここまで怒ることなかったと思うんだ。でも、相手が大好きな人だったから、それで……。」
私は想いを文章にして伝えるのが本当に下手だと思い、話してる途中で情けなく笑いそうになった。でも、川上くんが真面目な顔で私の拙い文章を聞いてくれたから、何とか自我を保つことができた。
「そっか。そうだったんだな……。」
川上くんは私に視線を合わせるようにその場に正座をした。床は固くて汚いのに、ためらうことなく。



