まさかこのご時世に、オレオレ詐欺なんてする人がいるとは思わない。いや、そりゃ少しくらいはいるんだろうけど、この電話、この声、オレオレ詐欺じゃない。聞き覚えのある声。そして、もうすっかり聞きなれた声。
「……落合……くん?」
「そう。オレ、落合くん!」
まるで本当のオレオレ詐欺みたいで、思わず笑ってしまった。情けない笑いに近かったかもしれない。こんな時にも私は落合くんに心配をかけている。本当に情けない、私。
「どうしたの?」
「『どうしたの?』って、ああ、あれ。財満さんの友達にケータイ番号訊いたんだよ。よく考えたらオレ、財満さんの連絡先知らなかったし。」
そういえばそうだった。こんなに長く一緒に居たのに、お互い連絡先を交換していなかった。別に毎日会うから必要ないと思っていたんだ。でも、今更落合くんの連絡先を知ったところで、使い道もないし、どうでもいい。
「それで、用件は何?」
「ああ、それね。まあ、催促っていうか、督促状っていうか……。財満さん、契約違反してるよね?」
「契約違反?」はて、覚えがない。
「私たち、お金の貸し借りでもしたっけ?」
「お金じゃなくて、約束したじゃん? オレが財満さんにギター教える代わりに、財満さんはオレに勉強を教えてくれるって約束。」
ああ、その約束のことか……。



