引っ越すと言っても少し離れた街に移動するだけだ。

引っ越しは、あの話から1週間後になった。

そして、それが今日。

こんな中3の6月に転校なんて、高校とかどうしよう。

あたしはそんな事を考えながら自分の荷物を車の荷台に詰めた。

「荷物も全部詰め終わったし、そろそろ出発するか」

お父さんは軍手を外しながらこちらを見た。

「鈴、そろそろ行くってよ」

鈴は、近所の同級生の友達に泣きながらお別れの手紙を渡した。

「弘瀬(ひろせ)さん、またこの街に戻ってくるんですか?」

よくお惣菜をくれた近所のおばさんが少し寂しそうに訪ねてきた。