「絆奈ちゃん、僕の事ちゃんと見て……」
遠くから、私を呼ぶかいとくんの声が聞こえる。
そんなかいとくんに対してすさまじい眼光を放つ須田さん。
そんな須田さんの姿を見て、かいとくんはぴたりと動きを止めてしまった。
「………」
「あら海音、ずいぶん楽しそうねえ?」
「………」
その剣幕に、さっきまでの美少女っぷりは消え失せてしまった。
「せっかく同じクラス、しかも海音の斜め前の席になれたっていうのに、どうして一度も話しかけてこないのかしら?」
ファサッと髪をかき上げる須田さん。
そのダークなオーラは、どことなくかいとくんに似ている気がする。
「………」
ぴしぴしと異様な雰囲気の須田さん。
そんな彼女に対して、かいとくんはただ真顔で…でも微動だにすることなく立ち尽くしていた。
「え、えっと……?」
そんな張り詰めた空気をどうにかしたくて。
というか、私が耐えきれなくて、つい口を挟んだ。



